共和制と君主の横暴の両方をからかうハチャメチャ喜劇~国際ギルバート・アンド・サリヴァン祭『ゴンドラの船頭たち』(配信)

 国際ギルバート・アンド・サリヴァン祭『ゴンドラの船頭たち』を見た。レイチェル・ミドル演出、Forbear! Theatreによる上演である。2022年8月1日の上演である。この演目は一度、以前にハロゲイトの国際ギルバート・アンド・サリヴァン祭で観劇したことがあるのだが、演出は違う。

 舞台はヴェネツィアである。地元で大人気のゴンドラ乗りの兄弟であるマルコ(デイヴィッド・メネゼズ)とジュゼッペ(アダム・ブラウン)はそれぞれ恋人と結婚したばかりだったが、突然この2人のどちらかがバラタリア王国の王子であり、先王がなくなったので王位が転がり込んだという知らせが舞い込んでくる。実は前のバラタリア王がウェズリー派のメソジストに改宗して評判をすっかり落としてしまったため、王子はトラブルを避けるためゴンドラ乗りに預けられた…のだが、この王子を預かったゴンドラ乗りが酔っぱらいだったため、しまいにどっちが王子だったかわからなくなってしまっていた。王子の乳母で現在は盗賊の妻になっているイネズ(ケイティ・パターソン)が到着するまで、マルコとジュゼッペのどっちが王子なのかはわからないということで、2人はイネズ到着まで法的には1人だということにしてバラタリア国の政務をとり、バラタリアをすっかり共和制っぽくする。ところがバラタリアの王子は実は赤ん坊の時にスペインのプラザ=トロ公の娘カシルダ(レイチェル・ミドル)と結婚させられていたということがわかり、2人に重婚疑惑が降りかかる。カシルダも今までそのことを知らず、プラザ=トロ公家に仕えていてイネズの息子であるルイズ(サム・スノーデン)に恋をしていた。みんなが気をもむ中でやっとイネズが到着するが、実はイネズは王子の身を守るためこっそり自分の息子とすり替えており、ルイズがバラタリア王子だったことがわかる。重婚疑惑や意に染まない相手との結婚もなくなり、全員がハッピーになって幕が降りる。

 ギルバート・アンド・サリヴァンらしいメチャクチャな話である。王制を攻撃していたゴンドラ乗りたちが王子だとわかると手のひら返しをしたり、なんだかよくわからないやり方でバラタリア国の君主制と共和制を融合させようとしたりする様子を通して共和主義者を辛辣にからかう一方、赤ん坊のうちに子どもを結婚させ、礼儀にやかましいわりには有限責任会社に関する法律を乱用するなどまともな責任感のないプラザ=トロ公を通して上流階級や君主による独裁もバカにしている。バラタリア王としてのマルコとジュゼッペは2人で1人の扱いになるのでひとりぶんしか食事が支給されないとか、法律の馬鹿馬鹿しさを諷刺した箇所がたくさんある。こういうジョークのツボを押さえたプロダクションで笑えるところがたくさんあり、またちょっと台詞を変えて現代風なメタなジョークにしているところもあったりして、楽しいプロダクションだった。