往年のハリウッド映画風の楽しい演出~国際ギルバート・アンド・サリヴァン祭『ペンザンスの海賊』(配信)

 国際ギルバート・アンド・サリヴァン祭の『ペンザンスの海賊』を配信で見た。サラ・ヘルスビー・ヒューズ演出のものである。『ペンザンスの海賊』は既に2回、生の舞台で見たことがある。

 お話じたいはメチャクチャな作品なのだが、全体的にハリウッドの昔のロマンティックコメディみたいなオシャレな演出だ。衣装などが1930年代風で、とくに少将の娘たちが着ている鮮やかでレトロな水着はハリウッド映画を思わせる。少将の娘たちはみんな同じドレスで見分けがつきにくくなりがちなのだが、ひとりひとり違う水着を着てフラフープを使ったダンスを披露しており、とても華やかだ。この舞台で見ていて一番、気になるところだと思われる海賊たちが結婚目的で少将の娘たちをつかまえようとするところは、娘たちがやってきた海賊を見て、自分たちのほうから好みの殿方をフラフープで引っかけ、けっこう積極的に色目を使う…という演出に変更されており、誘拐とか性暴力を思わせるところがなくなって、男女間の微妙でセクシーな口説きあいの駆け引きみたいになっていてなかなか面白かった。わりとフレデリック(デイヴィッド・ウェブ)もメイベル(エミリー・ヴァイン)も黄金期ハリウッド映画のカップルみたいな感じで、フレデリックはハンサムだが純朴、メイベルははっきりした性格で、2人でダンスをするところは往年のミュージカル映画のようである。笑いのツボを押さえたまとまりのあるプロダクションで、大変楽しめた。