実は猫映画~『地下室のヘンな穴』(ネタバレあり)

 カンタン・デュピュー監督『地下室のヘンな穴』を見てきた。

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 舞台は現代フランスのどこかの郊外である。アラン(アラン・シャバ)とマリー(レア・ドリュッケール)の夫妻は地下室にヘンな穴のある家を買うことにするが、この穴はなぜか家の上階につながっており、入ると時間が12時間進むかわりに肉体が3日若返るというものだった。マリーはこの穴を使うのにハマってしまい、若返ってモデルになると言い出す。一方、アランの上司であるジェラール(ブノワ・マジメル)は年下のガールフレンド、ジャンヌ(アナイス・ドゥムースティエ)と暮らしていたが、最近、日本でペニスを電子制御ペニスに付け替えてもらっていた。ところがこのペニスはけっこう不具合を起こしており…

 テーマは若さへの執着で、マリーとジェラールが女と男、それぞれ違った形で自分の加齢と成熟に向き合えない人として出てくる。ただ、突然モデルになりたいと言い出すあまり背景のわからないマリーよりも、たぶん若い頃は色男で鳴らしたのだろうが今はすっかり図々しい困ったおじちゃまになっているジェラールの話のほうが展開としては面白く、ヘンな穴よりも急に動かなくなったり火を噴いたりするサイボーグペニスの下ネタのほうを本筋にしたほうがもっと笑えて良かったのでは…と思ってしまった。ちょっと『マルコヴィッチの穴』っぽいところもあるのだが、穴の理屈は全くわからず、穴とペニスのヘンなネタ2発で1時間ちょっと引っ張って笑わせるという簡潔な不条理コメディである。

 なお、この映画は猫映画でもある。登場する猫は大変かわいい。さらに、すぐにふらっといなくなってお腹がすくと帰ってくるので困ったものだと言われている猫の生態に、穴に入ってよくわからない時間に戻ってくるマリーの生態がだんだん近づいていってしまうあたりも面白い。