現実との妙な符合~『ダウントン・アビー 新たなる時代へ』(ネタバレあり)

 『ダウントン・アビー 新たなる時代へ』を見た。

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 ヴァイオレット(マギー・スミス)が突然、南フランスにある別荘を亡くなった知人から譲られたので、孫娘のシビーに継がせたいと言い始める。ヴァイオレットに別荘を送ったモンミライユ侯爵の一家と会うため、ロバート(ヒュー・ボネヴィル)は家族を何人か連れて南フランスに行くことにする。一方、屋敷に残ったメアリー(ミシェル・ドッカリー)は、屋敷の屋根の修理料金を捻出すべく、映画の撮影場所としてダウントンを貸し出す。

 南フランスの話はまたもやヴァイオレットの過去のロマンスが出てきており、舞台は華やかだかいつものダウントンの延長といった感じである。お屋敷で展開する映画撮影の話は『雨に唄えば』オマージュみたいなところが大きい。サイレントから急に映画がトーキーになるところでは、その場であらゆる音(効果音を含む)をけっこうきれいに撮っていて、本当にサイレントの撮影現場ってこうだったのか…?とも思ったが、やはりこのへんは誇張があるらしい(『雨に唄えば』のほうがリアルであるようだ)。

 ダウントンに映画撮影隊がやって来たおかげでかなり「新たなる時代」らしい展開になっている。最初はお高くとまって不愉快だと思われた主演女優のマーナ(ローラ・ハドック、ジーン・ハーロウにそっくり)をダウントンの使用人であるアンナ(ジョアン・フロガット)とデイジー(ソフィー・マクシェラ)がワーキングクラスの女性として励まし、さらにはコーラ(エリザベス・マクガヴァン)が助け船を出してくれるあたり、わりと女性同士の連帯をちゃんと描いている。さらにトーマス(ロバート・ジェームズ=コリアー)にハッピーエンドらしいものが用意されているのは大変いいところで、クローゼットなゲイであるせいで人生が大変でグレ気味だった登場人物が、こういう保守的とも言える作品でしっかり幸せになるところを見られるというのは実に明るい終わり方だ。

 一方、この作品がヴァイオレットの終活と死で終わっているというのは、先日エリザベス2世が死亡したことを考えるとちょっと現実の時代と符合しすぎている…とも思える。ヴァイオレットは長らくダウントンの実質的な支柱だったが、次のリーダーはたぶんロバートを飛ばしてメアリーである。そのへんも現代のイギリス王室(チャールズよりウィリアムのほうが人気がある)と似ていてなんだか笑ってしまう。