ファッションの理想と倫理~『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』(試写、ネタバレ注意)

 『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』を見た。ミニスカートで有名なマリー・クワントのドキュメンタリーで、監督は自分でファッションブランドも持っているセイディ・フロストである。

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 マリー・クワントがデザインしたミニスカートがいかに60年代の女性解放の理想と結びついていたかというファッションの社会的な側面を見せる一方、クワントの夫であるアレキサンダー・プランケット・グリーンや友人のアーチー・マクネアがどういうところでクワントのヴィジョンを実現するための補佐をしていたかなど、ビジネスとしてのファッションにも切り込んでいる。マリー・クワントは60年代のファッションブランドとしては、ライセンス方式や幅広い商品展開などかなり新しいことをしており、一時は主力が化粧品だったそうだ。ところがヒッピーファッションが流行るようになるとマリー・クワントの未来的でポップなデザインが一時期あまり受けなくなったそうで、そのへんはファッションの移り変わりの速さを感じる。マリー・クワントの日本での大人気ぶりもよくわかるようになっている(今は日本の企業が買い取っているそうだ)。

 ちょっとビックリしたのは、最後にいきなりヴィヴィアン・ウェストウッドとかが出てきて、資源を浪費するファストファッション批判の話になるところだ。たぶんこのへんのファッション倫理に冠する話がけっこう監督も参加しているスタッフも声を大にして言いたかったことなんじゃないかと思う。ちょっとここと前の部分のつながりがスムーズではない気はするのだが、現代の映画だとまあ60年代のDIYの精神を取り戻して無駄をなくそう…みたいなオチになるのは当然なのかなという気もする。