松濤美術館「装いの力―異性装の日本史」展

 松濤美術館で「装いの力―異性装の日本史」展を見てきた。古代から現在まで、日本における異性装を神話や芸能などさまざまな観点から解説したものである。いろいろ面白いところはあるのだが、ただ全体的にちょっと掘り下げが少なく、薄い印象も受けた。第8章が完全に現代のアート、とくに男性が女装するアートに焦点をあてており、やや女性の男装とかふだん着るものの中でのユニセックスファッションみたいな文脈の話が少ないようにも思った。途中で『薔薇の葬列』がとりあげられているのだが、今の観点で見ると『薔薇の葬列』はそもそも異性装なのかすらもよくわからない曖昧なところがある(トランスジェンダーやノンバイナリの話なのかもしれない)…というような見方もなくはないと思う(日本の異性装の展示で『薔薇の葬列』を取り上げないわけにはいかないとは思うのだが)。展示スペースが限られていることもあり、もうちょっと狭い範囲に絞って深くやってもいいのではという気がした。

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