脚本にいろいろ問題が…『アムステルダム』

 デイヴィッド・O・ラッセル監督『アムステルダム』を見てきた。

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 実話を大きく脚色した作品である。第一次世界大戦の戦友である医者のバート(クリスチャン・ベール)と弁護士となるハロルド(ジョン・デイヴィッド・ワシントン)は、不審死したかつての上官について調査をしようとしたところ、新たに発生した殺人事件の罪をなすりつけられそうな事態になってしまう。ひょんなことからかつてアムステルダムで2人の親友だったがしばらく疎遠になっていた芸術家のヴァレリー(マーゴ・ロビー)も加わり、この怪しい事件を調べることにするが…

 昔からハラスメントで評判の悪いデイヴィッド・O・ラッセルが監督、最近アカデミー賞で失言したクリス・ロックも出演しているということであまり映画館に足が向かないな…とは思いつつ、主演3人の演技が見たくて行って来たのだが、正直なところ、かなりダメだったと思う。この3人の演技はいいのだが、とにかく脚本がパッとしない…というか、長いわりにあんまり話が整理されておらず、題材は興味深いのに演技に頼りすぎている。途中までは復員兵のケアやら人種差別やらいろいろなことが盛り込まれているのだが、終盤でいきなり大変な陰謀が展開し始めて、ペース配分とかトーンの統一性はこれでいいのか…という気がかなりした。とくに最後のところは、ここがこの映画の現代的なメッセージだということなのだろうが、そこまではオフビートなクライムコメディ風だったのに最後だけとってつけたような社会派な感じになっていて、そのへんのトーンのズレをクリスチャン・ベールロバート・デ・ニーロの演技力で誤魔化そうとしているような印象を受ける。また、アニャ・テイラー=ジョイとラミ・マレックの使い方については、なんか贅沢な役者の無駄遣いでは…という気がした。