いっそ清々しい後悔のなさ~東京芸術劇場『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』

 東京芸術劇場で、シルヴィウ・プルカレーテ演出のモリエール守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』を見てきた。

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 タイトルロールの守銭奴ことアルパゴン(佐々木蔵之介)はあまりにもケチで高圧的であり、子どもたちは困り果てていた。アルパゴンは近所の若い娘マリアーヌ(天野はな)との結婚を狙っていたが、マリアーヌはアルパゴンの息子クレアント(竹内將人)の恋人だった。アルパゴンの娘エリーズ(大西礼芳)は使用人のヴァレール(加治将樹)と相思相愛だが、アルパゴンは娘も金持ちの中年男アンセルム(壤晴彦)と結婚させたがっている。切羽詰まった子どもたちは想い人との結婚を実現すべく、いろいろと画策を始める。

 ビニールみたいなペラペラのシートにドアの形の穴をあけたものがぶらさがっているセットで、美術や着るものはわりと現代風だが、たまに時代不明のものもある。このペラペラのセットがおそらくポイントで、アルパゴンの薄っぺらさみたいなものと呼応していると思う。終盤はこのシートが崩れ落ちで、粗大ゴミ置き場みたいな荒涼とした場所で大団円となる。

 全体的にけっこう不穏なブラックユーモアあふれる作品である。とにかく強欲なアルパゴンを佐々木蔵之介がとても楽しそうに演じている。最後の落とし方は先日見た『スカパンの悪だくみ』みたいに生き別れになった家族の偶然による再会でオチをつけていて強引だし、さらに取り持ち役のフロジーヌとアンセルムを壤晴彦が1人2役で演じているせいで余計、結末のいい加減さが際立つようになっている。一方でアルパゴンが全く自分の金銭に対する態度を反省せず、最後まで悔い改めないところが面白い。アルパゴンが最後に結婚できて喜ぶ家族たちには目もくれず、お金の小箱を舞台中央で抱きしめて嬉しそうな顔で安心している様子はいっそ清々しい…というか、コイツは変わらないんだなぁという笑いを誘う。こういう頑固な人間には改心は望めず、実際的に対応しないといけない…というのは実に現実的な展開で、強引さとリアルさが絶妙なバランスで入り交じった終わり方だと思う。