1人芝居2本立て~『おふえりや遺文/Carmilla』

 消えた王国第1回公演『おふえりや遺文/Carmilla』を見てきた。小林秀雄『おふえりや遺文』とシェリダン・レファニュ『カーミラ』を短編の1人芝居(木原春菜出演)で2本立て上演するというものである。どちらも花なのかゴミなのかというような白い紙が散らばった舞台で展開される。

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 正直なところ、『おふえりや遺文』は今、1人芝居にするのに向いた芝居なのかな…と見てちょっと疑問に思った。見る前はけっこう1人芝居にしやすいような気がしていたのだが、実際に見てみるとオフィーリアがハムレットとの関係だけで存在していてあまり独立した女性として描かれていない(ハムレットあての遺書なんで当然だが)。小林秀雄自身の私生活とかにあまり興味がないと、けっこう男性に寄りかかりすぎの女性を描いたなんだか昔風な話に見える。

 それに比べると『Carmilla』のほうが話に起伏があり、語り手の主体性もある。若い女性同士のレズビアン的な関係(ただし片方は吸血鬼)を、回想のような形でひとりで演じるというのはなかなかうまいコンセプトだと思った。『おふえりや遺文』も『Carmilla』もある種のファム・ファタルの話として共通点があると思うのだが、後者のほうがきちんと若い女性の声が聞こえてくる台本になっているように思った。