難民たちの第二の人生~『チーム・ジンバブエのソムリエたち』

 『チーム・ジンバブエのソムリエたち』を見てきた。政治的・経済的混乱が続くジンバブエを脱出して南アフリカ共和国に移住した4人の難民の男性たちが、移住後に身につけたワインに関する知識でテイスティング世界大会に出場する様子を撮ったドキュメンタリーである。

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 ジンバブエにはほぼワイン文化が無いそうで、ジョゼフ、ティナシェ、パードン、マールヴィンの4人は南アフリカに移住してからワインを知り(南アフリカはワイン作りが盛んである)、ソムリエとして働くようになった。故郷から離れて苦労しているが、ワインにかける情熱は強い。4人で組んでジンバブエ初のチームとして、フランスで開かれるワインテイスティング世界大会に出場するのだが、自己主張の強いコーチが大会で足を引っ張るなど、予想外のトラブルにも見舞われる。

 『クール・ランニング』+『天使の分け前』みたいな感じで、見ていてけっこうドキドキするドキュメンタリーである。私は全くお酒が飲めないのだが、ワインのことが全くわからなくても、ワインテイスティングクリエイティヴな側面みたいなものはよくわかるように描かれているので楽しめる。4人が難民になったのはすごい苦労で大変なことだが、一方でワインが盛んな南アフリカに移住することで新たな情熱の対象が見つかり、才能が開花して第二の人生が始まることになった。こういうふうに難民として移住した先で、これまで住んでいた土地では出会うことができなかったであろう生き甲斐が見つかるというのは素晴らしいことだと思うし、いろいろつらいことがあってもワインに対する情熱を持ちながら前向きに暮らしているチーム・ジンバブエのソムリエたちはとても生き生きしている。南アフリカも治安が悪くて移住先の生活も必ずしも安心というわけではないのだが、全体的にはとてもポジティヴな後味の作品だ。