モリコーネの生前の業績がよくわかるドキュメンタリー~『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(試写)

 『モリコーネ 映画が恋した音楽家』を試写で見た。20世紀映画音楽の巨匠である作曲家のエンニオ・モリコーネの人生について、『ニュー・シネマ・パラダイス』などで一緒に仕事をしていたジュゼッペ・トルナトーレ監督が作ったドキュメンタリーである。モリコーネは2020年にお亡くなりになっており、生前の業績をまとめて全部きちんと紹介しようという作品だ。

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 ご本人のインタビューはもちろん、監督のトルナトーレや、クリント・イーストウッドクエンティン・タランティーノパット・メセニークインシー・ジョーンズ等々、音楽家、映画関係者などが大挙出演してモリコーネの思い出を語ったり、モリコーネの音楽を分析したりしてくれる。モリコーネの子ども時代や受けた音楽教育から主要な業績までほぼきちんと拾って解説されており、制作の裏話などもたくさん出てきていて、充実したドキュメンタリーだ(ただ、終盤に出てくるモリコーネ影響下にある新しいカバー曲とかリミックスについては楽曲名とアーティスト名を字幕で出して欲しいと思った)。モリコーネクラシック音楽の教育を受けており、師匠や同学の卒業生の間ではあんまり映画音楽が高く評価されていなかったのでちょっと肩身が狭いところがあったそうなのだが、全体的にはこの映画はそれに抗って映画音楽というのは20世紀のオーケストラ音楽の代表的なものとして位置づけられるべきであるということを主張し、モリコーネの人生を通してそれを描き出そうとしていると思われる。