あまり映画らしさは無い~『ヒトラーのための虐殺会議』(試写)

 『ヒトラーのための虐殺会議』を試写で見た。1942年のヴァンゼー会議の80周年記念で作られたドイツのテレビ映画で、日本では劇場公開される。

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 全体的に会議の議事録をそのまんま起こしたみたいな台本で、淡々と話し合いが進む。ユダヤ人の絶滅などという恐ろしい内容について、たいして忌避感もなく効率がいいとか悪いとかの話で会議をすすめるところが怖く、日本でも最近、力を増している効率優先主義の悪い点が思い起こされるような内容である。部署間でそれぞれ自分のところでやりたくないことと自分の職掌だと思っていることについての駆け引きがあるのはリアルで、たぶん本当にそのような縄張り争いがあったのだろうと思った。途中のランチで物資不足なのにサーモンが提供されて出席者が喜んでいるところは、事実なのかどうかは知らないが、ちょっとブラックユーモアを感じた。

 ただ、全体的に本当に淡々と会議が進むだけなので、映画的な面白さというのは無い。もともとはテレビ放送を想定しているらしいこともあり、密室的で動きは少なく、大画面で見た時に面白くなりそうなところというのはあんまりない。本来なら舞台にするほうが向いている題材ではないかと思う。こういう史実をしっかり映画化した作品にしてはずいぶんとスキャンダラスな日本語タイトルがついているが、まあそうでもしないとみんな見に来ない映画ではあろうと思う。