ゴシックホラー風二次創作~『ほの蒼き瞳』(ネタバレあり)

 『ほの蒼き瞳』をNetflix配信で見た。何度か一緒に仕事をしているスコット・クーパー監督とクリスチャン・ベールが再度組んだ作品である。エドガー・アラン・ポーが登場する歴史ミステリ小説の映画化である。

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 1830年、ウェストポイント士官学校が舞台である。士官候補生が変死し、調査のため引退した捜査官であるランドー(クリスチャン・ベール)が招聘される。ランドーはいろいろあって学校に在籍している士官候補生で詩人志望のエドガー・アラン・ポー(ハリー・メリング)に捜査を手伝ってもらうことになる。

 事件は史実に基づいているわけではなく(ポーが士官学校に行っていたのは本当)、『オスカー・ワイルドとキャンドルライト殺人事件』とか『探偵コナン・ドイル』みたいな、古典的なミステリやホラー、スリラーなんかの作者が実際に事件を捜査するというよくある発想の二次創作である。ゴシックホラー風味で、同じチームで作った『荒野の誓い』同様、わりと手堅い出来の作品だ。クリスチャン・ベールは監督と相性がいいのか生き生きしているし、いかにも風変わりな詩人志望らしいメリングや、トビー・ジョーンズをはじめとして脇を固める大ベテラン勢もいい。

 ただ、『荒野の誓い』の時も思ったのだが、わりと手堅く作っているという以上の飛躍はあんまりないし、比較的まとまりのない作品ではある。『荒野の誓い』と同じようなアラがやはりあり、前作よりは良くなっているものの、性暴力がいきなり出てきてそれでオチがつくのは手癖みたいなもんなのかな…と思ってしまった。この性暴力まわりについては変更して、もうちょっと全体的に整理したほうが面白いミステリにはなったと思う。