自伝的作品というだけあってわりと淡々とした作品~『エンドロールのつづき』(ネタバレあり)

 パン・ナリン監督『エンドロールのつづき』を見てきた。

www.youtube.com

 グジャラートの田舎町に住む9歳のサマイ(バヴィン・ラバリ)は、父(ディペン・ラヴァル)がやっている駅のチャイ売店を手伝いつつ、映画に憧れていた。そんなサマイは、ギャラクシー座の映写技師のファザル(バヴェーシュ・シュリマリ)に、料理の達人である母(リチャー・ミーナー)が作った弁当と引き換えに映写室に入れてもらえることになる。サマイは自分で映画上映の真似事をするなど、映画好きが高じていろいろなことをするようになるが、そのせいでトラブルにも巻き込まれる。

 監督の自伝的作品だそうで、そのためか展開はけっこう淡々としている。『ニュー・シネマ・パラダイス』とか『ラスト・ショー』(あと『エンパイア・オブ・ライト』も)などを思わせる、ノスタルジックな映画ものである。お父さんの店が駅の改修で閉鎖になるとか、いろいろちょっとした事件が起こるのだが、そこにお母さんが作ってくれる美味しい弁当の描写が挟み込まれている感じだ。サマイはもともとお話を作るなどクリエイティヴなことが好きな子で、マッチ箱の模様を使ってランダムにお話を作るゲームを楽しむなど、なかなか想像力が必要な遊びをしていた。そんなサマイが映画にハマり、DIYで上映の真似事をするようになるのだが、ここは創意工夫がなかなかすごいと思った(フィルム泥棒をするのはやりすぎだが)。最後はけっこう暴力的に終わる…というか、映画館の上映がデジタル形式の上映になってファザルが失業し、映写機やフィルムは廃棄されて再利用に…というオチで、映画の歴史を区切る上での一時代の終わりにサマイの新たな旅立ちが重なるようになっている。

 なお、この映画の宣伝方法にはちょっと文句がある。公式サイトのサマイ役のバヴィン・ラバリの紹介に「同じクラスのリヤという女の子に恋をしているが、まだ一度も会話を交わしたことはない」なんていうことが書いてあるのだが、こういうのはおふざけでもやめるべきだと思う。大人になってから本人が恥ずかしく思うのじゃないかという気がするからだ。