悪くはないが、要らない設定も~『ロミオ&ジュリエット』

 アレクサンドラ・ラター演出『ロミオ&ジュリエット』を見てきた。衣装は今の若者が着るような服で、完全に現代的な演出である。ロミオ(長谷川慎)たちがたむろしているのはプールバーだし、ロミオとジュリエット北乃きい)が出会うキャピュレット家のパーティが行われるのはクラブだ。ただし、建築物のセットは比較的オーソドックスで、バルコニーもちゃんとある。

 一番最初にプロローグ的な形でプロジェクションを使った登場人物紹介があり、できるだけ観客に話がわかりやすいようにしている。あと、全体的にロミオとジュリエットのロマンスが原作ほど厳密な秘密とされておらず、けっこう周りの若い人たちにはバレているあたりが現代的だ。プールバーでロミオがばあや(野口かおる)とジュリエットとの結婚について話すところでは、周りにいるベンヴォーリオ(石川凌雅)などにもその話が聞かれているし、ジュリエットには女友達がいて、途中まではロミオとの恋の話も小耳に挟んでいる。ただ、これだけ女友達がいると、最後のジュリエットが絶体絶命になるところで同年代の友達に相談しないのがちょっと不自然に思えてくるので、ここはもうちょっと工夫が要るかな…と思った。

 こういう形で若者の恋をリアルで現代的に表現しているのはいいのだが、要らないと思われる設定もけっこうある。まず、ジュリエットがミュージシャンを目指しているらしいのだが、途中の歌はあんまり展開に貢献しないので要らないのではと思ったし、正直なところ、「クラブで歌っているジュリエットにロミオが一目惚れ」はそろそろやめたほうがいいのではないかと思った(最近こういう演出はけっこう見かけるのだが、ちょっと見飽きた気がする)。あと、ロミオがパドヴァで少年院みたいなところに入っているのは意味不明な設定だと思った。というのも、少年院に連絡するなら電話をかけてロミオを呼び出してもらえばいいということになってしまうのでなぜわざわざバルサザーに手紙を持たせたのかよくわからない。なんといってもロレンス(山崎樹範)が少年院に電話をかける場面まであるので、「???」となってしまった。あと、少年院でいろいろ制限がありそうなところなのにロミオがすぐに逃げ出せたのも強引だ。