テキレジがおかしい~PAM『夏の夜の夢』

 東京綾瀬・廃工場跡シアターでPAMの『夏の夜の夢』を見てきた。工場を改修した小さいスペースで、2階にバースペースみたいなところがあり、その上に劇場がある。

 何もないブラックボックスで小道具も使わず、5人でいろんな役をとっかえひっかえやるプロダクションである。ところどころ悪くない演出もあるものの、おそらく人数が少なくてそれをごまかすためだと思うのだが、けっこうテキレジがおかしい。とくに不可思議なのが最後のところで、ボトムにあたるキャラクターが目覚めるところの有名な台詞はカットで、なぜかパックが「おやすみなさい」のエピローグを言った後に職人たちの劇中劇があるのだが、劇中劇は結局1場面くらいしかやらずに崩壊して終了し(シーシュースが職人たちを一応ねぎらう場面もない)、その後に恋人たちの目覚めの場面がある。「おやすみなさい」の挨拶があった後にさらに話があるというのは非常に変だし、職人たちの劇中劇は正直、なんでこうなったのか全然わからなかった。

 他にもセリフの使い方にはけっこういろいろ疑問がある。最初の場面ではシーシュースとハーミアの声が聞こえるだけで誰も登場人物が舞台に出てこないのだが、正直、あんまり『夏の夜の夢』を見たことがない人はシチュエーションがよくわからないのではと思った。さらにオーベロンとパックが話すところで役者が服を変えるのに時間がかかるのか妙にパック登場まで間があり、「隠れてるのかー」みたいな台詞でつないでいて、着替えは帽子をかぶるくらいでいいのですぐパックを出すべきでは…と思った。また、オーベロンが大変権威主義的で不愉快な男性として作られているのだが、それにしてもセリフがチンピラみたいに粗暴で、もうちょっと「丁寧にしゃべるけど不愉快な王様」みたいな感じにしたほうが怖くていいのでは…と思った。さらに初日のせいか役者陣がけっこうセリフをとちったり、もたついたりしており、けっこう全体的に話し方が固かった。

 空間の使い方としては、天井にパイプみたいなものが通っているところがあったりしてちょっと使いにくいのだろうが、3箇所にある白いカーテンがかかったスペースは要るのかな…と思った。奥のタイテーニアの寝室以外はあんまり効いていないと思う。また、音楽の使い方が全体的にあまり良くなく、やたらと不気味で静かな音楽をかけているのは一本調子で喜劇らしくないし、そのわりに職人たちが出てくるところで妙に騒がしい音楽がかかるのもなんだかミスマッチだ。職人の名前を元の名前からコッシーやらニッシーに変えたのは全く意味がないと思った。