演技はいいが、内容はよくある家庭劇~『The Son/息子』(試写、ネタバレ注意)

試写 フロリアン・ゼレール監督『The Son/息子』を試写で見た。

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 ピーター(ヒュー・ジャックマン)は妻ケイト(ローラ・ダーン)と離婚し、若いベス(ヴァネッサ・カービー)と再婚して息子セオが生まれたばかりである。ところが前妻ケイトから連絡があり、ケイトと住んでいるティーンエイジャーの息子ニコラス(ゼン・マクグラス)が不登校メンタルヘルスの問題を抱えていることを知る。ピーターはニコラスとしばらく一緒に暮らすことにするが…

 ヒュー・ジャックマンの演技は見るだけで価値があるし、他の役者陣も大変達者である。ただ、タイトルとテーマからしてどうしてもゼレール監督の前作『ファーザー』と比べてしまうのだが、構成が斬新で、さらに病気になった人の主体性も感じられる作りだった『ファーザー』に比べると、構成がオーソドックスで(最後にちょっとだけひねりがあるが)、あまり新しさはなく、よくある真面目な家庭劇という感じである。視点人物が病気の息子ではなく親なので、病気の人物の主体性があまり感じられないのもちょっと物足りないし、そのせいか息子役のマクグラスはどうもベテランに囲まれて演技がぱっとしないな…と思えるところもある。問題だらけの親子関係を描いた映画としては『ロスト・ドーター』とかのほうが斬新だった気がするし、まあジャックマンの演技を楽しむ映画かな…という気がする。