子どもたちが魔法版ChatGPTを完全に信じてしまう教育上よろしくない映画~『シャザム!~神々の怒り~』

 『シャザム!~神々の怒り~』を見てきた。映画じたいの評判がよろしくない上、最近、主演のザッカリー・リーヴァイが反ワクチンに傾いておりジョーダン・ピーターソン(『ドント・ウォーリー・ダーリン』で諷刺されていた人)を推しているという話も出ている、いろいろいわくつきの作品である。

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 フィラデルフィアの里親家庭であるバスケス夫妻の子どもたちであるビリー(アッシャー・エンジェル)とその5人のきょうだいは、前作で入手したスーパーヒーローの力で地元を守っていた…ものの、みんな子どもであんまり計画性がないこともあり、地元では変な困りもの扱いされていた。ところが強力な魔法を使うことができるアトラスの娘たちが魔法の杖を狙い、フィラデルフィアを存亡の危機に陥れる。ビリーたちは協力して対抗するが…

 チャーミングなところはあるし、最後にちょっとだけ大人のヒーローが出てきてしっかり締めてくれたり、魔術師(ジャイモン・フンスー)が見違えるようなおシャレ姿で出てきたりするところは面白い…のだが、全体的に脚本が相当緩い。前作で死亡したように見えた魔術師(ジャイモン・フンスー)がなぜか生きていたり、どういう理屈で出てきたのかよくわからないユニコーンがいきなり活躍し始めたりする。また、前作から入念に用意されていたはずのペドロ(ジョバン・アルマンド)のセクシュアリティに関するカムアウトがさらっと流されすぎである気もするし、フレディ(ジャック・ディラン・グレイザー)の足の障害の描き方も相変わらず気になるところがあった。とくに序盤に出てきたいじめっ子2人は、校長先生から譴責とか停学とか、何らかの処分を受けてもおかしくないようなエグいいじめをフレディにしていると思うのだが、軽く済みすぎでは…と思う(別に大人向けの映画ならそれでいいのだが、子どもが見ることを想定している映画なんだからそこはちゃんと「こういういじめをすると学校で怒られます」ということを見せてもいい気がする)。

 また、細かいところだが私がかなり気になったのは、魔法のペンであるスティーヴである。このスティーヴは何でも知っている魔法道具で、何かを尋ねると答えを紙に書いてくれるのだが、これがなんかChatGPTみたいである。この作品では子どもたちがスティーヴにいろいろ聞いて、それを全く疑わずに信じて行動するのだが、これはなんでもChatGPTとかグーグルに聞いて裏をとらずにやってしまうみたいな感じで、ITリテラシーならぬ魔法リテラシーがとても低く、教員としては非常に教育上よろしくないと思った…というのは言い過ぎかもしれないが、ずいぶん危なっかしい行動を無批判に描いている映画だなぁと思った。悪い魔法だってありそうなもんなのに、スティーヴの言うことを全部信じて大丈夫か…という気になってしまった。このへん、オラフがホメオパシーにハマってしまった『アナ雪2』(↓これに関しては自著にレビューの改訂版も収録した)とちょっと似ているかもしれない。