悪くはないが、ツメが甘いところはあるかな…『BACKBEAT』

 ブリリアホールで『BACKBEAT』を見てきた。有名になる前のビートルズを描いた作品で、イアン・ソフトリー監督による1994年の映画の舞台化である。演出は石丸さち子で、再演なのだが私は日本初演は見られていない。

 ジョン・レノン加藤和樹)は画家志望の親友スチュことスチュアート・サトクリフ戸塚祥太)をバンドに誘い、ベースを弾かせることにする。ビートルズとしてハンブルクに行って演奏することになるが、そこでスチュアートは地元の写真家アストリッド(愛加あゆ)と運命的な出会いをする。ハンブルクでアストリッドと画家活動をしたいスチュと、バンドをビッグにしたいジョンの気持ちはすれ違うようになるが…  

 もともとの映画がけっこうしっかりした作りでBL風味でもあるのだが、舞台版はさらにBLっぽい感じである。ジョンはスチュに夢中で、長じてオノ・ヨーコに夢中になったことを考えると、どうもアート系の才能溢れるタイプに弱かったんだろうな…と思えてきた。舞台は全体が額に入っていて、スチュが絵を描くところで始まることもあって、スチュのアーティストらしさを強調した話になっている。

 ちゃんと舞台で演奏しているというのが売りで、たしかに臨場感はあるのだが、一方で映画にあったいかにもオルタナっぽい感じはなくなっている。また、全体的にビートルズの面々が着ているものとか動きとかが全員けっこう洗練されている…というか、パンクやポゴを経由した感じのファッションや動きになっていると思う。そのため、出てきた時はビートルズというよりかストレイキャッツみたいだな…と思った。