アッシュランド(10)オレゴン・シェイクスピア・フェスティバル"The River Bride"

 オレゴンシェイクスピア・フェスティバルで今回最後の演目、"The River Bride"を鑑賞した。マリセラ・トレヴィニョ・オルタ作で、演出はローリー・ウーリィ。

 舞台はアマゾン川流域の小さな村。コスタ夫妻にはヘレナとベルミラというふたりの娘がおり、長女ヘレナは家族のために尽くす一方、街に憧れているベルミラはヘレナの少女時代のボーイフレンドであるデュアルテと三日後に結婚することになっていた。ベルミラがアマゾンカワイルカにえさをやって結婚式に招くような発言をした日、コスタがハンサムの男、モイゼスを川から網で釣り上げて保護する。モイゼスはヘレナを愛し、求婚するが…

 アマゾンカワイルカが人間の男性になって女性に求愛するというアマゾンの民話を下敷きにした作品で、とてもロマンティックな悲恋ものである。簡略化された桟橋が左側、右側に高床の家屋のセットがあり、それ以外は背景を全てプロジェクションと照明で処理する。姉妹同士の反目というのはちょっとステレオタイプ的なテーマだが、ヘレナの心情がとても細かく描かれているのであまり気にならず、終わり方は極めて悲劇的だ。しかしながらエピローグ部分でヘレナが妊娠した姿で現れるところはふつうの悲恋ものと異なり、どんなに悲恋を経験しても人間は生きていかねばならないということを示していて、ある種の強さがあると思った。