アイルランド文学

個人的に嫌いなタイプの芝居~オールド・ヴィク『フェイス・ヒーラー』(ライヴ配信)

オールド・ヴィクの有料ライヴ配信で『フェイス・ヒーラー』を見た。アイルランドの有名劇作家ブライアン・フリールの作品である。 www.oldvictheatre.com この作品は全編モノローグでできている。第1部と第4部はアイルランド生まれのフェイス・ヒーラーであ…

台本に問題があるが、イヴ・ベストの演技のおかげで救われた~ヴォードヴィル劇場『つまらぬ女』(配信)

Marquee TVの配信でオスカー・ワイルドの『つまらぬ女』を見た。ドミニク・ドロムグール演出で、2017年にヴォードヴィル劇場で上演されたものである。 www.marquee.tv お話はヴィクトリア朝の上流社会を舞台にしたメロドラマである。タイトルロールの「つま…

諷刺を意図しているようだが、わりとふつうのコメディ~ヴォードヴィル劇場『真面目が肝心』(配信)

Marquee TVのフリートライアルで『真面目が肝心』を見た。マイケル・フェンティマンの演出でヴォードヴィル劇場で上演されたもので、2018年の公演である。 www.marquee.tv 美術はオーソドックスなヴィクトリア朝風のものである。わりと暗めのセットが特徴で…

綺麗なセットに楽しい笑い~『ウィンダミア卿夫人の扇』(配信、ネタバレあり)

Marquee TVで『ウィンダミア卿夫人の扇』を見た。2018年に上演されたもので、演出家はなんとあのキャシー・バークである。台本は読んだことあるし映画では何度も見たことあるのだが、舞台上演は映像も見たことがなく、今回初めて見た。 www.marquee.tv 若く…

笑えてショッキングで政治的な北アイルランドの芝居~ロイヤル・コート劇場、Cypress Avenue (配信)

ロイヤル・コート劇場のCypress Avenue配信を見た。北アイルランドの劇作家デイヴィッド・アイルランドによる作品で、ヴィッキー・フェザーストーン演出、主演はスターのスティーヴン・レイである。1時間35分くらいで英語字幕がつく。 www.youtube.com 主人…

よくできたお芝居だが、改善の余地あり~『ダンシング・アット・ルーナサ』

劇団俳小の公演で、ブライアン・フリールの『ダンシング・アット・ルーナサ』を見てきた。フリールのオリジナルのお芝居をちゃんと生で見るのは初めてである。 www.haishou.co.jp 話は全体にマンディ家の5人姉妹の末娘クリス(西本さおり)の息子であるマイケ…

舞台を現代にすると途端にアルジーとジャックがイヤなやつに~『まじめが肝心』

恵比寿のエコー劇場で『まじめが肝心』を見てきた。文化庁海外研修の成果公演だそうで、演出家の大澤遊をはじめとして海外研究に行ってきたスタッフがかかわっている。ワイルドの人気作だが日本ではそんなによく上演されるわけではないので、ちょっと心配し…

モジョのお父さんは何をしてるの?~『モジョミキボー』(ネタバレあり)

オーウェン・マカファーティ作、鵜山仁演出『モジョミキボー』を見てきた。浅野雅博と石橋徹郎がたくさんの役を演じ分ける2人芝居である。 setagaya-pt.jp 舞台は1970年のベルファストである。モジョはプロテスタント、ミキボーはカトリックの家庭の子供だが…

まだまだ改善点は多いが、今後に期待したい~『旅人たちの春の夢 -The Tinker's Wedding-』

上の小劇場でジョン・ミリントン・シングの芝居『旅人たちの春の夢 -The Tinker's Wedding-』を見てきた。アイルランド演劇を上演する演劇企画CaLの第一作だそうだ。普通は『鋳掛屋の婚礼』などという名前で翻訳されている戯曲である。 物語は鋳掛屋、つまり…

死ぬまでの間延びした時間~世田谷パブリックシアター『The Silver Tassie 銀杯』

世田谷パブリックシアターで森新太郎演出『The Silver Tassie 銀杯』を見てきた。ショーン・オケイシーの有名作だが日本初演らしい。私もナショナル・シアターの公演をアーカイヴで見たことあるだけで、生で見るのはこれが初めてである。 これは第一次世界大…

別にIRAはハンサムじゃなくたっていいんだよ?〜『マクガワン・トリロジー』(ネタバレあり)

シェーマス・スキャンロン『マクガワン・トリロジー』を見てきた。小川絵梨子演出で、3幕もの…というよりは3本の短い戯曲がつながってるみたいな芝居である。 主人公はマクガワン(松坂桃李)というIRAの殺し屋で、80年代の北アイルランド紛争が舞台である。マ…

金と野心〜ヴォードヴィル劇場『理想の夫』

ヴォードヴィル劇場で『理想の夫』を見てきた。演出はジョナサン・チャーチで、言わずと知れたワイルドの有名作である。セットや衣装はウェストエンドらしい凝ったもので、音楽などもいろいろ工夫している豪華なプロダクションだ。 基本的には笑いのツボをお…

インターカルチュラルな舞台、はじけるマゾヒズム〜ケルティック能『鷹姫』

ケルティック能『鷹姫』を見てきた。アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツが能をもとに作った詩劇『鷹の井戸』を能として上演しやすいよう横道萬里雄が改作したもので、アイルランドと日本の国交60周年を記念する上演である。鷹姫役に梅若玄祥…

正攻法に人生がつらい〜Kawai Prooject『ゴドーを待ちながら』

こまばアゴラ劇場でKawai Project『ゴドーを待ちながら』を見てきた。私の指導教員である河合祥一郎先生の新訳で、演出も河合先生がつとめている。 おそらく私が今まで見た中では一番正攻法で丁寧な『ゴドーを待ちながら』である。セットは何もない舞台に木…

戯曲に内在するジェンダーステレオタイプの強化~ナショナル・シアター『鋤と星』

ナショナル・シアターで『鋤と星』を見てきた。1926年に初演されたショーン・オケイシーの有名作で、1916年にアイルランドで起こったイースター蜂起を扱った作品である。ただ、この作品は蜂起を英雄的に描いた作品ではなく、突然街が戦場となって右往左往す…

もう少し田舎くさいほうが…『イニシュマン島のビリー』(ネタバレあり)

マーティン・マクドナー作、森新太郎演出の『イニシュマン島のビリー』を見てきた。この作品はダブリンでドルイドカンパニーの上演を見たことがある(ダニエル・ラドクリフ版は見ていない)。 1930年代はじめのアイルランド、ロバート・フラハティ監督がドキュ…

ボストン(3)アメリカルネサンス学会3日目

学会三日目は午前中のアイルランドとルネサンスについてのセッションに出た。ツダりは以下の通り。 アメリカルネサンス学会2016、3日目

バラバラの肉体を取り戻す〜マーティン・マクドナー『スポケーンの左手』(ネタバレあり)

シアタートラムでマーティン・マクドナーの戯曲『スポケーンの左手』を見てきた。2010年に初演された作品を日本語にし、小川絵梨子演出で上演している。小川絵梨子は既に何度かマクドナーの作品を演出したことがあり、かなりこなれていると思う。 舞台はあん…

アイルランド人にも軍人にも見えないよ〜紀伊國屋サザンシアター『ヒトジチ』

新宿の紀伊國屋サザンシアターで、ブレンダン・ビーアンの『ヒトジチ』を見てきた。1950年代末に初演された有名な芝居なのだが、正直演出が全然ダメだったと思う。 舞台はダブリン。若いIRAメンバーが北側のベルファストで処刑されるというニュースが流れる…

おっさんもおばさんも恋したい!〜オスカー・ワイルド『真面目が肝心』

ハロルド・ピンター座でオスカー・ワイルドの『真面目が肝心』(The Importance of Being Earnest)を見てきた。言わずと知れたワイルドの大人気戯曲なのだが、意外なことに舞台では初めて見た。 全く批評を読まずに行ったので、セッティングを見て「あれ、こ…

若いのに、こんななのか〜東京乾電池『ゴドーを待ちながら』

ザ・スズナリで劇団東京乾電池の『ゴドーを待ちながら』を見てきた。柄本佑と柄本時生主演ということで、ウラジミールとエストラゴンがかなり若い。 非常にちゃんとした『ゴドー』だと思ったのだが、とりあえず柄本兄弟が出てきた瞬間になんともいえない出オ…

リアルIRA〜世田谷パブリックシアター『ビッグ・フェラー』

世田谷パブリックシアターで森新太郎演出の『ビッグ・フェラー』を見てきた。これ、ロンドンで初演を見て、訛りまくった英語がよくわからなかったわりには非常に面白かったのだが、あんまりお客さん入ってなかった…んだけど、セタパブ公演はほぼ満席でびっく…

にせカップルの末路〜『ロンサム・ウェスト』(ネタバレあり)

新国立劇場でマーティン・マクドナー作、堤真一・瑛太主演の『ロンサム・ウェスト』を見てきた。これ、戯曲読んだことがあるつもりだったのだが、見に行ったらなんか別の戯曲と勘違いしてたっぽく、原作未読。 お話はアイルランドの西の田舎、リーナンを舞台…

ベケットはつらい。人生もつらい。でもそれはくだらないってことじゃない〜サミュエル・ベケット『ソロ』

シアターχで、アイルランドの劇団マウス・オン・ファイアによるサミュエル・ベケット『ソロ』公演を見てきた。ベケットの比較的短い一人芝居、『わたしじゃない』『モノローグ一片』『クラップの最後のテープ』を連続上演するというもの。 一言で言うと、感…

『ザ・コミットメンツ』〜原作に比べると、ただのフィールグッド?

パレス座でThe Commitments『ザ・コミットメンツ』を見てきた。 これ、原作はアイルランドの人気作家ロディ・ドイルの小説で、映画が大変有名である。映画は見れなかったのだが、小説だけは読んでいった。おれたち、ザ・コミットメンツposted with amazlet a…

洗練と伝統芸能の間で〜『ザ・アイリッシュダンス 〜ラグース〜』

蒲田の太田区民ホールで『ザ・アイリッシュダンス 〜ラグース〜』を見てきた。 ラグースは主にアイルランド西部のミュージシャンとダンサーを中心にしたグループで、伝統的なアイルランド音楽とアイリッシュダンスを演奏する。『リヴァーダンス』みたいにス…

みどりのクマが生き別れの姉妹に出会う〜日本橋丸善アイルランドフェア

職場の向かいでやっている日本橋丸善のアイルランドフェアにいってきた。テキスタイルや小物が中心の小展示だけどけっこう面白い。 こ、これは… ダブリンから連れて帰ってきてうちに住んでいるエリンちゃんの生き別れになった姉妹ではないか!! ↓↑これがう…

John Kerrigan, Archipelagic English: Literature, History, and Politics 1603-1707

John Kerrigan, Archipelagic English: Literature, History, and Politics 1603-1707 (Oxford: Oxford University Press, 2008)を読んだ。 Archipelagic English: Literature, History, and Politics 1603-1707posted with amazlet at 13.08.12John Kerriga…

もうフェミニストじゃないなんて言わせない!キャトリン・モラン、How to be a Woman(女になる方法)

キャトリン・モラン(Caitlin Moran)の自伝的エッセイ、How to Be a Woman「女になる方法」(Ebury Press、2011)を読んだ。とにかくユーモアがあって笑えるので本当にオススメ。 キャトリン・モランはウォルヴァーハンプトンのカウンシルハウスで育ったアイリ…

かなり気合いの入った18世紀アイルランド演劇の史料集〜The Dublin Stage, 1720-1745

本日はJohn C. Greene and Gladys L.H. Clark, The Dublin Stage, 1720-1745: A Calendar of Plays, Entertainments, and Afterpieces (Bethlehem: Lehigh University Press, 1993)をご紹介。 これは通読するための研究書ではなく18世紀ダブリンの演劇に関す…