リチャード三世

『ロスト・キング 500年越しの運命』パンフレットに寄稿しました

『ロスト・キング 500年越しの運命』パンフレットに寄稿しました。既に映画にコメントを寄せて、『FIGARO japon』にも短評を書いているのですが、パンフレットでは少し長めに戯曲『リチャード三世』や、私がこの映画の主人公であるフィリッパ・ラングリーさ…

ほんの少しだけ『リチャード三世』~『三月大歌舞伎第一部:花の御所始末』(ネタバレあり)

『三月大歌舞伎第一部:花の御所始末』を見てきた。宇野信夫作で1974年に初演された作品で、今回は40年ぶりの再演だそうである。室町時代の歴史に取材しているが、『リチャード三世』がヒントらしい。 足利義満(河原崎権十郎)の次男である義教(松本幸四郎…

台本がちょっと混乱気味~『歌妖曲~中川大志之丞変化~』

明治座で『歌妖曲~中川大志之丞変化~』を見てきた。倉持裕が作・演出で、『リチャード三世』をベースにして昭和歌謡界を舞台とした翻案である。 www.sanjushi2nd-2022.com 芸能一家である鳴尾家の息子である定(中川大志)は、家族でひとりだけ顔と四肢に…

かなりダイジェストっぽい~『Richard3 i bara』(配信)

『Richard3 i bara』を配信で見た。千賀多佳乃作・演出によるリチャード三世ものである。 1時間40分くらいしかないのだが、前半はシェイクスピアでいうと『ヘンリー六世』のあたりも盛り込んでいて、正直、この長さだとかなりダイジェストっぽい。リチャード…

ちょっとダイジェストっぽい?~『薔薇王の葬列』

日本青年館ホールで『薔薇王の葬列』を見てきた。菅野文の同名漫画・そのアニメ化を原作とする舞台で、おおもとの原作はシェイクスピアの『ヘンリー六世』三部作と『リチャード三世』(つまり薔薇戦争サイクル)である。漫画とアニメは未見である。 www.yout…

殺陣がとても良い~フロント・フット・シアター『リチャード三世』(配信)

フロント・フット・シアター『リチャード三世』を配信で見た。殺陣の専門家であるローレンス・カーマイケル演出で、コックピット劇場で上演されたものである。おそらく2017年の公演だろうと思う。 www.youtube.com シンプルな箱みたいなセットで、広報に4段…

笑いと怖さ~シェイクスピア・バイ・ザ・シー『リチャード三世』(配信)

シェイクスピア・バイ・ザ・シーによる『リチャード三世』を配信で見た。2021年7月24日にサン・ペドロのポイント・ファーミン・パークで上演されたもので、ステファニー・コルトリンが演出している。 www.youtube.com クロスの形に切り抜いたアーチがたくさ…

こんなにテンションの高いヘイスティングズは珍しい~G.Garage///『リチャード三世』

すみだパークシアター倉でG.Garage///『リチャード三世』を見てきた。河内大和演出・主演である。 g-garage-richard3.studio.site 主役をはじめとしてカクシンハンの役者陣がかなり出ており、音楽もカクシンハンでお馴染みのユージ・レルレ・カワグチの生演…

能舞台の撮影はなかなか難しい~鮭スペアレ『リチャード三世』(配信)

鮭スペアレ『リチャード三世』を配信で見た。坪内逍遥訳『リチャード三世』を能舞台で上演するというものである。全部通しでやるのではなく、一部の場面を抜き出した短い公演である。 syake-speare.com 正直、コンセプトとして示されている「肉体を持たない…

ドナルド・トランプ時代のシェイクスピア~Kings of War (配信)

ITAの配信でKings of Warを見た。イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出でシェイクスピアの『ヘンリー五世』(ただし最初にプロローグみたいな感じで『ヘンリー四世』第二部の最後の切れっ端部分が入る)+薔薇戦争サイクルを4時間半くらいで上演するものである。ア…

大作を一挙上映~新国立劇場シェイクスピア歴史劇シリーズ映像上映『ヘンリー六世』『リチャード三世』

新国立劇場シェイクスピア歴史劇シリーズ映像上映で『ヘンリー六世』と『リチャード三世』を見てきた。鵜山仁演出で、だいたい同じ座組で2009年からやってきたプロジェクトの復習編である。ただし全部の映像を見られるわけではなく、けっこうカットしてある…

かなり野心的な演出~クロンボー城にてShakespeare Was There+『リチャード三世』野外上演

クロンボー城では夏に野外シェイクスピア上演を行っており、今年は『リチャード三世』だった。こんな感じでお城を背景にして上演する。 舞台はこんな感じ。後ろがクロンボー城。舞台上の金網の部分は回転する。 本上演の前にShakespeare Was Thereというスタ…

カクシンハン『薔薇戦争』(演出ネタバレ多数、メモ)

カクシンハン『薔薇戦争』を見てきた。7時間にわたる長丁場の芝居で、『ヘンリー六世』三部作で4時間半+『リチャード三世』で2時間半である。欠点とかアラはいろいろあるのだが、とにかく私はこういうシェイクスピアを見たいんだ!というようなエネルギッシ…

京劇風味のシェイクスピア~中国国家話劇院『リチャード三世』

東京芸術劇場で王暁鷹演出、中国国家話劇院『リチャード三世』を見てきた。 衣装もセットも中国の時代劇風である。セットは後ろに漢字が書かれた白っぽい幕がかかったもので、この幕は人が死ぬたびにどんどん血の筋が増えていく。打楽器の生演奏もある。女優…

政治的な敵が見えない、実存遊園地〜シルヴィウ・プルカレーテ演出『リチャード三世』

東京芸術劇場でシルヴィウ・プルカレーテ演出『リチャード三世』を見てきた。 いかにもヨーロッパ的なヴィジュアルと演出で、基本的に全部ブラックボックス…というか、血だか泥だかわからないような飛沫がいっぱいついた石の壁を模した布で覆われた四角い箱…

アルメイダ・ライブ『リチャード三世』

アルメイダ・ライブでルパート・グールド演出、レイフ・ファインズ主演の『リチャード三世』を見てきた。昨年、既に生で見ている。基本的にはあんまり変わらない感想だったのだが、撮影がとてもうまく、細かい表情も全体の雰囲気もできるだけわかるように撮…

演技は良いが、普通の演出〜アルメイダ座、レイフ・ファインズ主演『リチャード三世』(演出ネタバレあり)

アルメイダ座でルパート・グールド演出、レイフ・ファインズ主演の『リチャード三世』を見てきた。衣装なども現代風にモダナイズされ、レスターでの発掘の成果も取り入れた演出である。 このプロダクションは、現代人がレスターの駐車場を発掘して人骨が出て…

強迫的反復〜シアター風姿花伝、カクシンハンによる薔薇戦争サイクル一挙上演(ネタバレあり)

シアター風姿花伝でカクシンハンによる薔薇戦争サイクルの一挙上演を見てきた。シェイクスピアの作品のうち、『ヘンリー六世』三部作と『リチャード三世』は薔薇戦争を扱っているので薔薇戦争サイクルと呼ばれることがあり、これはひとまとめに論じられるこ…

リチャードを2人が演じる、野心的な翻案〜少年社中『リチャード三世』

あうるすぽっとで少年社中の『リチャード三世』を見てきた。場所や時代は特定されていないが、衣装は和装にいろいろ手をいれたようなもので、ヨークは白、ランカスターは赤というふうに基調色を分けている。セットは舞台手前から奥に歪んだ木の橋みたいな通…

とても野心的、だが…柿喰う客『完熟リチャード三世』

吉祥寺シアターで柿喰う客『完熟リチャード三世』を見てきた。いつもどおりオールフィメールである。 『完熟リチャード三世』はかなり野心的なプロダクションである。オールフィメールなのはいつものことだが、今回はキャストがたった7人と大変規模が小さく…

レザボア・クラウンズ、あるいはパルプ・ヒストリー〜マーティン・フリーマン主演『リチャード三世』

トラファルガー・スタジオでマーティン・フリーマン主演の『リチャード三世』を見てきた。演出はジェイミー・ロイド。 時代は台詞にもある(というか、この芝居の台詞が元になってそう呼ばれている)「不満の冬」こと1970年代末くらいに設定されており、現実に…

マーク・ライランス主演、グローブ座『リチャード三世』

グローブ座でマーク・ライランス主演のオールメール版『リチャード三世』を見てきた。とにかく暑くて芝居を見る環境としては最悪だった…がまあなんとか。 ライランス(前のグローブ座の芸術監督)のリチャード三世はケヴィン・スペイシーやジョンジョ・オニー…

RSC『リチャード三世』〜悪くはないけど伏線が…

さて、バーミンガムからストラットフォード・アポン・エイヴォンに移動し学会出席。一日目の夜はスワン座でロイヤルシェイクスピアカンパニーの『リチャード三世』を見た。悪くはないのだが、最後のほうかなり演出がとっちらかってしまった感じ… セットや衣…

オールド・ヴィック座、サム・メンデス演出、ケヴィン・スペイシー主演『リチャード三世』〜舞台と映画の間で

オールド・ヴィックでサム・メンデス演出、ケヴィン・スペイシー主演の『リチャード三世』を見てきた。『アメリカン・ビューティ』のコンビがまた組むということで、今年の夏の人気公演のひとつ。チケットは既に売り切れてる。スポンサーはメリルリンチとか…