文学

アポなしで斎藤緑雨が凸してくる、世にも恐ろしい明治文壇〜『書く女』

世田谷パブリックシアターで永井愛の『書く女』を見てきた。樋口一葉を黒木華が演じる。 一葉がひどい貧乏暮らしの中で半井桃水に師事したり、他の作家たちと関わったりしながら才能豊かな作家として開花し、死んでいくまでを描いた作品である。一見、書いて…

小田嶋隆「触らぬフェミに祟りなし」を芸術史の観点から批判する

『新潮45』2015年11月号の「言論の不自由」特集に小田嶋隆「触らぬフェミに祟りなし」(pp. 41-46)という記事が寄稿されているのですが、この記事には演劇の研究者(及びフェミニスト)としては見過ごせないレベルの調査不足、あるいは舞台芸術の軽視があると思…

Get ye flocks off, get ye flocks off, honey〜『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム』

『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム』を行きの飛行機の中で見た。 主人公はひつじのショーン。ショーンと仲間たちは農場主を眠らせてバカンスをとろうとするが、ひょんなことから農場主が寝ているトレイラーが暴走して街まで行ってしまう。農場主…

フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(3)フェミニスト批評編

一昨日の「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編」と「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(2)理論・学術・専門書編」に続いて、最後に「フェミニスト批評編」をやろ…

フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編

最近炎上していたこのまとめがとにかくひどい。「クソフェミ「まずは本を読め!」俺ら「どの本を?」のテンプレに答える本当にフェミニズムが学べる5冊の本」 とりあえずこのまとめのひどさはいくつもあるのだが、 ・タイトルに「クソフェミ」というのが入って…

近代も前近代も、女を救わない〜『パプーシャの黒い瞳』(ネタバレあり)

岩波ホールでポーランドの映画『パプーシャの黒い瞳』を見てきた。 1910年くらいに生まれ、80年代に亡くなった実在するポーランドのジプシー(ロマ)の女性詩人、パプーシャことブロニスラヴァ・ヴァイスの生涯を描いた伝記映画である。パプーシャはロマの娘と…

ウィレム・デフォーに尋ねないで自分で続き書けよ〜『きっと、星のせいじゃない』

『きっと、星のせいじゃない』を見た。 ヒロインのヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)は17歳だが末期ガンに苦しんでおり、毎日鬱々とお気に入りの小説『大いなる痛み』を読み返す日々。心配した両親に無理矢理サポートグループに連れて行かれるが、そこで出…

日本語版ウィキペディアで「ハート・クレイン」の項目に大幅追加しました

アメリカ文学関係のスタブを日本語版ウィキペディアに乱造していたアカウント(今はブロック中)が作成した記事「ハート・クレーン」を普通アメリカ文学研究で使われている表記「ハート・クレイン」に改名し、英語版からの翻訳で大幅追加しました。クレインは…

アマゾンで各種文献・映画リストを作りました

アマゾンで学生指導用などのためいろいろな文献リストを作って公開しました。イスラームについて知るブックリスト…これは他の方のオススメ本を集めたもの。 シェイクスピアをこれから読む人向けの研究書20冊 …以前にやったこちらのエントリのリスト 英文学者…

働かないための冬休みのブラックリスト10点(書籍+映画)

夏休みに「英語圏文化について知りたい人向けの、夏休みのブラックリスト10点(書籍+映像作品)」を実施したところ好評で「またやれ」というご意見があったので、冬休みもやろうと思う。しかしながらただやるだけでは面白くないので、冬休みらしく休むための…

ヴェルレーヌとランボー、泥沼不倫劇〜『皆既食』

クリストファー・ハンプトン作、蜷川幸雄演出『皆既食』を見てきた。原作は1967年の作品で、1995年にレオナルド・ディカプリオ主演で『太陽と月に背いて』として映画化されている。象徴主義の詩人アルチュール・ランボーとポール・ヴェルレーヌの泥沼不倫を…

女性名で執筆活動を行った男性作家をリストしてみた

アイルランドの作家、フラン・オブライエンの新訳が出るということなのだが、私、最近友人にすすめられるまでこの作家のことを全く知らず、女性だと思って検索したら(これ、なんかキレイな感じの名前なんで私の隠れた性的偏見が活動してしまってケルト美女を…

すばらしい生き方をする、できる限りお近づきになりたくない人々〜エミリー・マッチャー『ハウスワイフ2.0』

エミリー・マッチャー『ハウスワイフ2.0』森嶋マリ訳(文藝春秋、2014)を読んだ。ハウスワイフ2.0posted with amazlet at 14.10.17エミリー マッチャー 文藝春秋 売り上げランキング: 4,683Amazon.co.jpで詳細を見る アメリカにおける、高学歴女性・キャリア…

英語圏文化について知りたい人向けの、夏休みのブラックリスト10点(書籍+映像作品)

いろいろなところで大学の先生が夏休みのブックリストを作って公開しているので、私も作ってみようと思う。ただし、映画やドラマを入れたいのと、あとちょっと夏なので納涼っぽくホラーやSFを入れたいと思ったので、ブックリストではなくブラックリストとす…

外国語ができるとは、なんと辛いことか〜『ドストエフスキーと愛に生きる』

アップリンクで、ドキュメンタリー映画『ドストエフスキーと愛に生きる』を見た。よくできた映画だったと思うのだが、別に愛とかの話ではない気がしたので(気がしただけだが)、邦題はこんなんじゃないほうがよかったのでは…もとのタイトルは『五頭の象と生き…

駒場博物館「ダンヌンツィオに夢中だった頃―カブリエーレ・ダンヌンツィオ(1863-1938) 生誕150周年記念展」

駒場博物館で「ダンヌンツィオに夢中だった頃―カブリエーレ・ダンヌンツィオ(1863-1938)生誕150周年記念展」を見てきた。駒場博物館は以前の勤め先(司書TAやってた)で行くのは久しぶりだったのだが、全然雰囲気も変わっておらず懐かしい感じ。 ダンヌンツ…

本文批評にまつわる怪談集〜フレドソン・バワーズ『本文批評と文芸批評』

書誌学の定番を読み直す企画の一部として、フレドソン・バワーズ『本文批評と文芸批評』(中央書院、1983)を読んだ。本文批評と文芸批評posted with amazlet at 13.12.11フレドソン・バワーズ 中央書院 売り上げランキング: 1,728,197Amazon.co.jpで詳細を見る…

吉屋信子の従軍記とその周りの議論に注目〜久米依子『「少女小説」の生成: ジェンダー・ポリティクスの世紀』(青弓社、2013)

久米依子『「少女小説」の生成: ジェンダー・ポリティクスの世紀』(青弓社、2013)を読んだ。「少女小説」の生成: ジェンダー・ポリティクスの世紀posted with amazlet at 13.12.02久米 依子 青弓社 売り上げランキング: 273,097Amazon.co.jpで詳細を見る 近…

ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』〜恋か、諷刺か

ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』野崎歓訳(光文社、2011)を読んだ。うたかたの日々 (光文社古典新訳文庫 Aウ 5-1)posted with amazlet at 13.11.20ヴィアン 光文社 (2011-09-13)売り上げランキング: 25,276Amazon.co.jpで詳細を見る きちんと原作を読んだ…

働いたら負け、現代思想家には死を、そしてただ手を動かしてアートを〜『ムード・インディゴ うたかたの日々』

『ムード・インディゴ うたかたの日々』を見てきた。 私、1968年にフランスで映画化された『うたかたの日々』を高校生の時に見てなんて変な映画だ…と思った覚えがあり、今回もなんてったってミシェル・ゴンドリー監督なのですごく変な映画を期待していったの…

カティリーナにも歴史あり〜大浦康介『フィクション論への誘い―文学・歴史・遊び・人間』

大浦康介『フィクション論への誘い―文学・歴史・遊び・人間』(世界思想社、2013)を読んだ。フィクション論への誘い―文学・歴史・遊び・人間posted with amazlet at 13.08.21世界思想社 売り上げランキング: 64,510Amazon.co.jpで詳細を見る 芸術をやっている…

前田愛『近代読者の成立』〜日本近代メディア受容史に関する基本書

前田愛『近代読者の成立』を読んだ。1973年だかに出て何度か再版されているらしいのだが、私が読んだ2001年の岩波現代文庫版ももう品切れらしい。良い本なのに残念である。 内容は天保期から戦後くらいまでかなり長いスパンで、出版、作者の考え方、読者の投…

出光美術館「源氏絵と伊勢絵〜描かれた恋物語」展

出光美術館で「源氏絵と伊勢絵〜描かれた恋物語」展を見ていた。結構こんでいて人気もある展覧会だったのだが、うちが絵巻とかマンガみたいな絵に物語がついてるタイプの絵が大変苦手であるせいであまり楽しめず…一枚の絵はわりとわかりやすいものもあったの…

さかのぼるって何?文学や映画における、時間が過去から未来に直線的に進まない作品のタイプ分類

第七回歴史コミュニケーション研究会に出席した。 報告内容についてはこちらとかこちらで既に詳しい説明があがっているからいいとして、私が気になったのは第二部「さかのぼり世界史A」である。というのも、なんか普段文学や芝居、映画のナラティヴに触れて…

杉山博昭「隠された実母――『モーセとエジプト王ファラオの聖史劇』に投影された社会的関心」

杉山博昭「隠された実母――『モーセとエジプト王ファラオの聖史劇』に投影された社会的関心」、『西洋中世研究』4(2012), 149-69を読んだ。 この論文は15世紀フィレンツェの聖史劇『モーセとエジプト王ファラオの聖史劇』のテクストを主に「母」をめぐる表現…

ジャック・ボドゥ『SF文学』〜たぶん著者はファンタジーが嫌い

ジャック・ボドゥ『SF文学』新島進訳(白水社、2011)を読んだ。これは西洋SF小説の歴史と各ジャンルの概要を新書一冊くらいのコンパクトサイズで解説しようというものである。 前半はSF小説の歴史、中盤はアメリカ・UK・フランスを中心にした地域ごとの特徴、…

トム・ストッパード&ジョー・ライトの演劇的異化効果が炸裂する『アンナ・カレーニナ』〜全ては劇場の中で起こっている[ネタバレあり]

キーラ・ナイトレイ主演の『アンナ・カレーニナ』を見てきた。えーっと『アンナ・カレーニナ』が映画化されるのは…いったい何回目だ? それで、とりあえずは出回っている二枚のポスター写真を見ていただきたい。 ↑これ、なんかヘンだと思いません?一枚目は…

パリ旅行(12)お昼ご飯とヴィクトル・ユゴー資料館

最終日お昼は友人とマレ地区の人気カフェ、Le Loir dans la Théièreへ。本日の定食ということでスパイシーチキンのポテトグラタン添えを注文。 鶏肉はちょっとカレー風味でさっぱりしていて美味しい。グラタンもイモにシンプルなベシャメルソースをはさんで…

デジタルヒューマニティ学科特別講義"Integrated Information Access and Analysis of Japanese Humanities Databases"

今日はデジタルヒューマニティ学科の特別講義、"Integrated Information Access and Analysis of Japanese Humanities Databases"をきいてきた。立命館の前田亮先生が、平安時代のテキストのデジタル可視化と浮世絵データベース作りについて講義するというも…

こんなんうちが見たいロルカじゃない!ゲイト座『イェルマ』

ゲイト座でフェデリコ・ガルシア・ロルカの有名な戯曲『イェルマ』を見てきた。ロルカは私のお気に入りの劇作家の一人なのだがお芝居を観るのは初めてだったので楽しみにしていた…ものの、全然ダメだったと思う。うちは古典の大胆な翻案は好きだしこの間同じ…