セクシュアリティ

ゲイのオーラルヒストリーを題材とするモノローグ劇~『ライオット・アクト』

配信で1人芝居『ライオット・アクト』を見た。アレクシス・グレゴリー作・出演による、ゲイのオーラルヒストリーをテーマとするモノローグ劇である。ハックニーエンパイアで収録された公演をストリームシアターが有料配信している。 www.stream.theatre スト…

今月の連載は前回に続いてヴィクトリア朝の都市伝説デバンキング企画です

今月の連載記事ですが、前回の連載で家具の脚カバーに関する都市伝説の話が比較的好評だったので、イギリスの文化とセクシュアリティに関する都市伝説デバンキング第二弾をやりました。映画『ヒステリア』に出てくる、ヴァイブレータがヒステリー治療のため…

ハイパーリンクと男らしさ~『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』

『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を見てきた。1969年の東大駒場の900番講堂で行われた三島由紀夫と全共闘の討論会に関するドキュメンタリー映画である。 www.youtube.com TBSに残っていた記録映像をもとに再構成したものだということで、それに解説…

マシンの性生活を考える~『ターミネーター:ニュー・フェイト』(ネタバレ注意&この記事には刺激の強い内容が含まれます)

こちらの記事は加筆修正して雑誌に投稿するため公開停止しました。

演技と椅子~『ある少年の告白』(ネタバレあり)

ジョエル・エジャトン監督『ある少年の告白』を見てきた。同性愛転向療法(同性愛者を異性愛者に転向させられるということをうたった治療法)の施設に入れられた男性の回想録にもとづく映画である。 www.youtube.com アーカンソーに住む牧師であるマーシャル(…

今回の連載は「その露出には意味がある~『シャーロック』と『アメリカン・ハッスル』に見る女性の体の表現」です

今回のwezzyの連載は「その露出には意味がある~『シャーロック』と『アメリカン・ハッスル』に見る女性の体の表現」です。『シャーロック』のアイリーン(ララ・パルヴァー)の全裸と『アメリカン・ハッスル』のシドニー(エイミー・アダムズ)の脇乳ドレスにつ…

『アフター6ジャンクション』の「英語圏のボーイズ・ラブ、【スラッシュ・カルチャー】入門」補足(文献情報など)

昨日の『アフター6ジャンクション』で「英語圏のボーイズ・ラブ、【スラッシュ・カルチャー】入門」を聞いて下さった皆様、ありがとうございました。昔から聞いていた宇多丸さんの番組に出られるなんて、本当に光栄でした(しかも『アフター6ジャンクション』…

牧歌から垣間見えるグローバル世界、そして『嵐が丘』~『ゴッズ・オウン・カントリー』(ネタバレあり)

新宿シネマートで『ゴッズ・オウン・カントリー』を見てきた。5回しか上映がなく、超満員でチケットがとれたのも奇跡的だった。 www.youtube.com ヨークシャの田舎に住む若者ジョニー(ジョシュ・オコナー)は、病気の父と気難しい祖母とともに牧場を経営し、…

セクシー、暴力的、でも一歩引いて〜松本俊夫回顧上映『薔薇の葬列』

イメージフォーラムの松本俊夫回顧上映で『薔薇の葬列』(1969)を見てきた。十代のピーターを主演に迎え、60年代末のゲイカルチャーや政治を背景に主人公のゲイボーイ、エディの青春を描いた物語である。 基本的には『オイディプス王』を下敷きにしており、母…

1950年代から7世代のゲイを7つの短編で〜キングズ・ヘッド・シアター、Outlaws and In-Laws

キングズ・ヘッド・パブの劇場でOutlaws and In-Lawsを見てきた。もともとキングズ・ヘッドはクィア系の演目に強いのだが、この作品は劇場のクィアシーズンの一環で、同性愛合法化50周年を記念していつもよりたくさんゲイに関する作品を上演するということだ…

帝国とシスターフッド〜パク・チャヌク監督『お嬢さん』(ネタバレ及び猥褻な表現あり)

パク・チャヌク監督作『お嬢さん』を見てきた。これ、原作はサラ・ウォーターズによるヴィクトリア朝を舞台にしたミステリ『荊の城』である。舞台をイギリスから植民地時代の朝鮮半島に移し、結末などもかなり変更している。 1939年の朝鮮半島、ヒロインのス…

キツい物語に的確な演出〜『BENT』(ネタバレあり)

世田谷パブリックシアターでマーティン・シャーマン『BENT』を見てきた。ナチスによる同性愛者迫害をとりあげた大変有名な戯曲で、映画化もされている。今回は森新太郎演出、佐々木蔵之介主演である。 主人公のマックス(佐々木蔵之介)はベルリンでのらくら生…

messy連載に「英語圏の腐女子文化〜知られざるスラッシュフィクションの世界」を書きました

いつものmessyの連載に「英語圏の腐女子文化〜知られざるスラッシュフィクションの世界」を書きました。英語圏のスラッシュについての研究紹介です。本当はもっといろいろな研究を紹介し、最新の動向やブロマンスの広がりにも触れ、あと私が個人的に気に入っ…

『わたしを離さないで』についての連載記事がアップされました

messyでやっている連載に『隠れたるレズビアンと生殖〜『わたしを離さないで』』がアップされました。カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』におけるレズビアンの描写に関するちょっとクィア批評っぽい分析で、小説版のほうについてはネタバレ注意です。こ…

画面の全てが女の心を映す〜『キャロル』(ネタバレあり)

トッド・ヘインズ監督の新作『キャロル』を見てきた。原作はパトリシア・ハイスミスの『キャロル』である。とにかくびっくりするくらいよくできている映画だ。 1952年のニューヨークを舞台に、ふたりの女性の恋を描いた映画である。離婚を控えた美しい中年女…

女に幻想持ちすぎじゃない?『彼は秘密の女ともだち』(ネタバレあり)

フランソワ・オゾン監督の最新作『彼は秘密の女ともだち』を見てきた。 主人公は親友ローラを失ったクレール(アナイス・ドゥムースティエ)。ショックを受けているクレールは夫ジルにすすめられたこともあり、亡きローラの夫ダヴィッド(ロマン・デュリス)と娘…

『輪舞』の翻案、と思いきや…キングズ・ヘッド'Fucking Men'(性的内容・ネタバレ注意)

私の大好きなパブシアター、キングズ・ヘッドにてジョー・ディピエトロ作'Fucking Men'を見てきた。ものすごいタイトルの芝居だが、この作品はシュニッツラー『輪舞』の登場人物を全員ゲイにして翻案したものである。『輪舞』は10人の男女がどんどんセックス…

Party Up!市民ひとりひとりの政治を称える『パレードへようこそ』(ネタバレあり)

『パレードへようこそ』を見てきた。 舞台は1984年、サッチャー政権下の炭鉱閉鎖反対スト。ストで収入も無く、苦労する炭鉱の人々を助けたいと思ったロンドンのゲイ活動家マーク(ベン・シュネッツァー)は、プライドパレードでの募金をきっかけに「炭坑夫支援…

カミングアウト映画としての『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(ネタバレあり)

ベネディクト・カンバーバッチがアラン・チューリングを演じた伝記映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を観た。 チューリングについては、前にブレッチリー・パークに行った時のエントリでいろいろ書いたのでこちらを参照。簡単に言…

自足する、非歴史的かつクィアな人間〜『プリデスティネーション』(ネタバレあり)

マイケル&ピーター・スピエリッグ監督『プリデスティネーション』を見てきた。ハインラインの「輪廻の蛇」が原作らしいのだが、未読(是非読まなきゃ)。 主人公はバーテンダーのふりをしつつ実は時空警察につとめている男(イーサン・ホーク)と、ひょんなこと…

個人的なことは、政治的ではないのか〜『透明な隣人 〜8 -エイト-によせて〜』

フェスティバル/トーキョー2014の演目である『透明な隣人 〜8 -エイト-によせて〜』を見てきた。演出家の西尾佳織さんもドラマトゥルクの岸本佳子さんも私の知り合いである。既に原作『8-エイト』を同じスタッフで上演しており、そちらも私は観ていて感想も…

「自然観」の何とも言えないうさんくささ〜田中ひかる『生理用品の社会史−タブーから一大ビジネスへ』

田中ひかる『生理用品の社会史−タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房、2013)を読んだ。生理用品の社会史: タブーから一大ビジネスへposted with amazlet at 14.08.17田中 ひかる ミネルヴァ書房 売り上げランキング: 221,649Amazon.co.jpで詳細を見る …

中立性?そんなもん知るか!〜同性婚をテーマにした朗読劇『8-エイト』

『8-エイト』を見てきた。これは東京国際レズビアン&ゲイ映画祭の関連企画で、知人も何人か参加している。このタイトルだけだと、アメリカ人はピンときても日本の人はなんだかさっぱりわからないのではないかと思うのだが(日本語版、なんでこんなグーグル対…

人生はキラキラのT.レックスだけでできてるわけじゃない〜『チョコレートドーナツ』(ネタバレあり)

新宿シネマカリテで『チョコレートドーナツ』を見てきた。大ヒットで拡大公開しても大混雑ということだったので、そろそろ落ち着いただろうと思って見に行ったのだが、相変わらず水曜日は全部売り切れで前から二番目の席しか残ってなかった。 舞台は1979年の…

理想宮か、公共彫刻か?〜『アナと雪の女王』(ネタバレあり)

『アナと雪の女王』を見てきた。私、ディズニーが大っきらいなので金を払って見に行きたくなかったのだが、あまりの評判の良さに敵の軍門に降ってしまった… 好き嫌いはともかくとして、見た後最初の感想は、「これは女子のスター・ウォーズになる」ってこと…

アデルをあんな顔にさせたのは、アートなあなた〜『アデル、ブルーは熱い色』(ネタバレあり)

『アデル、ブルーは熱い色』を見てきた。 高校生のアデルとアーティストのエマの恋を長いスパンで描いた恋愛もので、三時間もある。セクシャルマイノリティのヘヴィな恋愛を長い期間にわたって描いた大作ということでは『わたしはロランス』にかなり似た感じ…

フェミニストっぽい映画を作ろうとして失敗したロマコメ〜『ドン・ジョン』

ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの初監督作『ドン・ジョン』を見た。オンラインポルノ中毒の現代のドン・ファンことジョン(イタリア系のカトリックの青年)が真実の愛を見つけるまでの遍歴…といえばいいのかな? …これ、明確にフェミニスト的意図を持って作ら…

意外なほど楽しめなかった〜デイヴィッド・テナント主演『リチャード二世』

渡英してすぐバービカンでグレゴリー・ドーラン演出、デイヴィッド・テナント主演のRSC『リチャード二世』を見てきた。なんてったってデイヴィッド・テナント!っていうことですっごく苦労してチケットを手に入れて楽しみにしていたのだが、なんか意外なほど…

月に帰るクィアな処女〜『かぐや姫の物語』

『かぐや姫の物語』を見てきた。話は誰でも知ってる『竹取物語』だし、絵画的な魅力の詰まった画面の処理とかフェミニズム的な物語、仏教的な要素などについては既にたくさんレビューが出ているのでもうあまり書くこともないだろうと思うのだが、ひとつ気付…

いろいろな意味でジャガーノート・シップなリブート版スター・トレック〜『スター・トレック イントゥ・ダークネス』

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』を見てきた。 SFものとして面白かったし、いろいろ政治的な意味合いもあり、あとうちみたいにもともと全然スター・トレックを見てない(根っからの『スター・ウォーズ』派でしてな)人でも楽しめるという点でとても…