オセロー

けっこうな野心作~こまばアゴラ劇場『オセロー』

こまばアゴラ劇場で滋企画『オセロー』を見てきた。ニシサトシ演出による作品である。 パイプ椅子くらいしかない舞台で、登場人物は赤ジャージなど現代の衣装を着ている。小道具もハンカチ程度である。5人だけのとても小規模な舞台で、1人で複数の役を演じた…

いろいろ詰め込みすぎでは…『celos~緑色の目の怪物』

新宿スターフィールドでDialogue!×SHAKESPEAREの『celos~緑色の目の怪物』を見てきた。シェイクスピアのいろいろな作品をつないで作るシリーズの3作目である。 基本的には『オセロー』と『冬物語』で、それに『ハムレット』『マクベス』『夏の夜の夢』など…

内田莉紗『オセロー』シェイクスピア朗読Challenge #5(配信)

内田莉紗『オセロー』シェイクスピア朗読Challenge #5を配信で見た。。木村龍之介演出で朗読による1人芝居を行うシリーズの5作目である。たぶん役者の個性のせいだと思うのだが、かなりドラマチックなリーディングで、ひとりでいろいろ声を変えて凝った表現…

ナショナル・シアター・ライブ『オセロー』のパンフレットに寄稿しました

ナショナル・シアター・ライブ『オセロー』のパンフレットに寄稿しました。「人間を分ける」というタイトルで簡単な解説を書いています。よろしくお願い申し上げます。 www.ntlive.jp

朝日カルチャー講座「『オセロー』は誰を雇ってどう演出すべきなのか?人種差別と上演史」が無事終了しました

朝日カルチャーオンライン講座「『オセロー』は誰を雇ってどう演出すべきなのか?人種差別と上演史」が無事終了しました。お聞き下さった方々、どうもありがとうございます。ブラックフェイスやキャスティング中心の話をしました。 www.asahiculture.jp

かなりちゃんとした『オセロー』翻案~『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』(ネタバレあり)

劇団☆新感線『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』を見てきた。青木豪作、いのうえひでのり演出による『オセロー』の翻案である(かなり『仁義なき戦い』の影響も受けている)。2011年に初演された作品の12年ぶりの再演だが、設定はかなり変更されて…

5月13日に朝日カルチャーにて『オセロー』オンライン講義を行います

5月13日(土)19:00より、「『オセロー』は誰を雇ってどう演出すべきなのか?:人種差別と上演史」というタイトルで、朝日カルチャーにてオンライン講義を行います。オンラインアーカイブもあります。以前、論文にしたブラックフェイスとかの話をする予定で…

動きの制限から祝祭へ~『令和X年のオセロー』

吉村元希作・演出、戯曲組『令和X年のオセロー』を見てきた。90分くらいに刈り込んだ『オセロー』の翻案である。シンプルなセットに現代風の衣装で(ただし女性陣はコルセットみたいなものをつけている)、かなりデズデモーナ中心の構成にし、ビアンカ周りの…

英文学会発表が無事終了しました

日本英文学会第94回全国大会1日目の「シェイクスピアとフェミニズム的受容」シンポジアムにて、「誰も憧れないシェイクスピアのヒロインたちー『デズデモーナ』と『ヴィネガー・ガール』」の発表を行いました。久しぶりに事前レコーディングではないライヴの…

バレエが入る珍しい上演~『オテロ』(配信)

アーリドラーテ歌劇団『オテロ』を配信で見た。新国立劇場での上演を記録したものである。指揮は山島達夫、演出は木澤譲である。 musica-celeste.zaiko.io 舞台奥から前まで真ん中に白い長方形の絨毯が敷かれており、ソーシャルディスタンスのこともあって舞…

最後をいじらないほうが良かったのでは…『オセローと言う男』

松本大作・演出『オセローと言う男』を配信で見た。内容はたいてい『オセロー』なのだが、ちょっと変えてあるところがある。 en-3-plaze.stores.jp 何もないブラックボックスでコンパクトにまとめた上演である。映像はこの手の小劇場配信にしてはかなり質が…

会食政治とシェイクスピア~『KCIA 南山の部長たち』(ネタバレあり)

『KCIA 南山の部長たち』を見た。1979年の朴正煕大統領暗殺事件を主題にした歴史もの政治スリラーである。 www.youtube.com 物語はおおむね、大韓民国中央情報部(KCIA)のキム部長(イ・ビョンホン)を中心に進む。前のKCIA部長だったパク部長(クァク・ド…

大変良い上演だが、相変わらず映像が…ブラックフライアーズ劇場『オセロー』(配信)

ブラックフライアーズ劇場、イーサン・マクスウィーニー演出『オセロー』を見た。有料配信で、数日前に上演されたものである。 americanshakespearecenter.com ルネサンス風の衣装にシンプルなセットを使った正攻法のビジュアルだが、この上演の特徴はキャス…

田中兆子『劇団42歳♂』文庫版の解説を書きました

田中兆子さんの『劇団42歳♂』が文庫化されるにあたり、解説を書きました。『オセロー』をオールメールで上演するカンパニーのお話で、シェイクスピアなどなどについて書いています。 劇団42歳♂ (双葉文庫) 作者:田中兆子 発売日: 2020/08/06 メディア: Kindl…

ちょっとセットに凝りすぎで撮影により見づらいところも~ウィーン国立歌劇場『オテロ』(配信)

ウィーン国立歌劇場の配信でヴェルディ『オテロ』を見た。2018年3月18日上演のもので、指揮者はグリーム・ジェンキンズ、演出がクリスティーネ・ミーリッツである。 www.staatsoperlive.com セットがやたら凝っている…というか、別に豪華な家具があるとかで…

登場人物の心象を強調する演出~メトロポリタンオペラ『オテロ』(配信)

メトロポリタンオペラ『オテロ』を配信で見た。バートレット・シャー演出、ヤニック・ネゼ=セガン指揮で、2015年に上演されたものである。アレクサンドルス・アントネンコがオテロを演じており、ブラックフェイスなしのオテロ役ということで話題になったも…

珍しい演出あり~言葉のアリア『オセロー』(ネタバレあり)

八幡山ワーサルシアターで言葉のアリア『オセロー』を見てきた。佐々木雄太郎演出・構成によるもので、劇団としては第2回公演らしい。現代風の衣装で、真ん中に白い台があるシンプルなセットで上演するものである。 このプロダクションの特徴はオセローを女…

とても野心的だが、好きかというと…劇団AUN Age.1『オセロー』

浅草九劇で長谷川志演出、劇団AUN Age.1『オセロー』を見てきた。 ほぼ何もないブラックボックスみたいな舞台にかなりカットを少なくした台本で(全くカットがないというわけではないが)、台詞をきちんと聞かせる上演である。キプロス上陸後の台詞などはカッ…

嫉妬深い男の勘違いを描いた笑劇~『喜劇新オセロ』

高円寺アトリエファンファーレで『喜劇新オセロ』を見てきた。これは益田太郎冠者が1906年に書いた『オセロー』の翻案で、初演は川上音ニ郎の一座によるものだったらしい。あまり上演されない芝居で、60分くらいの小品である。演出は西沢栄治で、キャストはA…

ユタ出張(7)ユタシェイクスピアフェスティヴァル、ストレートな演出の『オセロー』

ケイト・バックリー演出『オセロー』を見てきた。 親密感のあるスタジオで、後部に金属の幾何模様の扉が設置されているだけのシンプルなセットである。この扉は幾何模様の隙間からある程度向こう側が見えるようになっているのだが、最後の場面で使われるベッ…

鋭く人種差別に切り込んでいるが、ジェンダーはイマイチ〜『アイヌ オセロ』

シェイクスピア・カンパニーの『アイヌ オセロ』を学生を引率して見に行ってきた。1月に仙台で公演があり、そこまで行って見てこようと思うくらい行きたかった上演なのだが週末出勤のせいで果たせず、今回やっと東京公演で見に行けた。 日本の芝居とは思えな…

ヨーロッパの政情を反映したのはいいが、細かい理屈が…イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出『オセロー』

東京芸術劇場でイヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出『オセロー』を見てきた。アムステルダムの劇団による上演である。 衣装などは全部現代風である。冒頭のヴェニスの場面はカーテンがかかった奥行きの無いセットなのだが、キプロスに行くとカーテンが全部送風機の…

水のキプロス〜新国立劇場『オテロ』

新国立劇場でヴェルディ『オテロ』を見てきた。マリオ・マルトーネ演出、パオロ・カリニャーニ指揮である。このオペラを見るのは初めてだ。 オペラは初心者なのであまり詳しいことはわからないのだが、歌は「柳の歌」が良かったと思う。話はかなり大胆にカッ…

オレは自分の心を袖から出してカラスにつつかせたりはしない〜子供のためのシェイクスピア『オセロー』

子供のためのシェイクスピア『オセロー』をあうるすぽっとで見てきた。カットして2時間におさめたコンパクトな上演である。 このプロダクションシリーズはいつも演出・出演の山崎清介が人形を使用するのだが、今回はイアーゴーが人形を使うようになっており…

長渕剛にご用心〜カクシンハン『オセロー』(Black)

木村龍之介演出、カクシンハン『オセロー』のBlack初日を見てきた(出張のためWhiteは見られない予定)。 ハコが池袋のシアターグリーンなので、前にカクシンハンが使っていた新宿Space雑遊とは少し違った感じである。真ん中に折り目がある、黒い移動式のつい…

基地の外を嫌うイアーゴーと反乱するエミリア〜ニコラス・ハイトナー演出、NTライヴ『オセロー』

NTライヴの『オセロー』を日本橋のTOHOシネマズで見てきた。これは去年上演されたもので、ニコラス・ハイトナー演出、エイドリアン・レスターがオセロー役でイアーゴー役がローリー・キニアという、これ以上ないような配役の演出である。 美術も演出も、非常…

1920年代のニューヨークを舞台にした『オセロー』の翻案もの〜『The Lost Glory―美しき幻影―』&『ラテン・グルーヴ パッショネイト宝塚!』(ネタバレあり)

宝塚で『The Lost Glory―美しき幻影―』&『ラテン・グルーヴ パッショネイト宝塚!』を見てきた。『オセロー』の翻案ものだというので行ってみたのだが、思ったよりわかりやすく『オセロー』だった。 舞台は1920年代末のニューヨーク。主人公は移民の息子から…

世田谷パブリックシアター、白井晃『オセロ―』〜非政治的にリア充爆発しろ(ネタバレあり)

世田谷パブリックシアターで白井晃演出『オセロ―』を見てきた。なんかお手洗いみたいな簡素なセットに現代の衣類でやる上演。 この演出のコンセプトはまあなんか所謂「リア充爆発しろ」みたいな感じのものである。オセロ―が仲村トオル、デズデモーナが山田優…

トニ・モリスンが脚本を書いた『オセロー』の翻案音楽劇『デズデモーナ』(バービカン)〜とても力のある作品だが、死後の世界とかいらない

バービカンでトニ・モリスンが脚本を書き、ロキア・トラオレが音楽を作った『オセロー』の翻案音楽劇『デズデモーナ』を見てきた。 ほとんど一人芝居に近いもので、役がふられているのはデズデモーナ役(たまにオセローやエミリアも自分でやったりする)の白人…

ジンバブエを舞台にした翻案版『オセロー』〜サザーク劇場『オティエノ』

サザーク劇場で『オティエノ』を見てきた。これは原作が『オセロー』なのだが、舞台を2008年のジンバブエ大統領選挙の少し前に設定して翻案にしてある。かなり暗いが、よく考えた翻案でわりとよかったと思う。 オセローに相当するオティエノはミリシア(民兵…