三島由紀夫

いやな男子校ノリみたいな話~『午後の曳航』

オペラ『午後の曳航』を日生劇場で見た。三島由紀夫原作で日本が舞台だが、ハンス=ウルリッヒ・トライヒェル台本、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ作曲によるドイツ語のオペラである。指揮はアレホ・ペレス、演出は宮本亞門である。1990年に初演された作品だ…

レイプ・リベンジ・クィア・ファンタジア~『薔薇と海賊』

東京芸術劇場でunrato#8『薔薇と海賊』を見てきた。三島由紀夫の戯曲で、大河内直子演出によるものである。 tomin-fes.com 童話作家の楓阿里子(霧矢大夢)のところに、もう30歳なのにまるで子どもで自分が阿里子の童話に出てくるユーカリ少年だと思ってい…

年齢の変化~日本大学芸術学部演劇学科公演『卒塔婆小町』

日本大学芸術学部演劇学科総合実習IIAの公演である『卒塔婆小町』を見てきた。三島由紀夫の『近代能楽集』の一本で、1時間足らずの短編演目である。稲葉賀恵(2016年の『野鴨』の演出家)の演出によるもので、出演はもちろん学生である。 新型コロナウイルス…

綺麗な演目だが…『M』(配信)

東京バレエ団の『M』を配信で見た。三島由紀夫をテーマにモーリス・ベジャールが作ったバレエ作品である。三島の没後50周年記念に東京文化会館で10月に上演されたものの映像である。 www.nbs.or.jp 直線的に三島の人生を描いているわけではなく、子どもの頃…

『彼女たちの三島由紀夫』に寄稿しました

『彼女たちの三島由紀夫』に寄稿しました。書誌情報は以下の通りです。 北村紗衣「地球人には家族は手に負えないークィアSFとしての『美しい星』」、中央公論特別編『彼女たちの三島由紀夫』中央公論新社、2020、48-50。 実はもう2年くらい前から大『美しい…

ライヴエンタテイメントが見られないつらさをそのまま憂える~三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020 憂国/橋づくし』

三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020』第一弾を見てきた。短編を4本連続上演するもので、第一弾は『橋づくし』と『(死なない)憂国』である。 www.nissaytheatre.or.jp 野上絹代演出『橋づくし』は、新橋の料亭の女たちが銀座の7つの橋を渡る願掛けをす…

ハイパーリンクと男らしさ~『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』

『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を見てきた。1969年の東大駒場の900番講堂で行われた三島由紀夫と全共闘の討論会に関するドキュメンタリー映画である。 www.youtube.com TBSに残っていた記録映像をもとに再構成したものだということで、それに解説…

エネルギッシュで見映えのする演出~オペラ『金閣寺』

東京文化会館で宮本亜門演出のオペラ『金閣寺』を見てきた。三島由紀夫の小説が原作だが、クラウス・H・ヘンネベルクによる台本はドイツ語である。 www.nikikai.net 話は小説にそっており、主人公である溝口がコンプレックスを抱え、いろいろと美に関する不…

もう一つの事実と命~『命売ります』(ネタバレあり)

サンシャイン劇場で『命売ります』を見てきた。三島由紀夫の小説をノゾエ征爾が戯曲化・演出したものである。 自殺に失敗した羽仁男(東啓介)が、生き延びたからどうせ要らない命だと「命売ります」という商売を始めたことから起こる、さまざまなドタバタ大騒…

やっぱりいなかったのかもしれないね~『豊饒の海』における美しい空隙、東出昌大

紀伊國屋サザンシアターで『豊饒の海』を見てきた。三島由紀夫の大長編小説の舞台化で、長田育恵脚色、マックス・ウェブスター演出である。 『豊饒の海』は四世代にわたる輪廻転生を主題としており、『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の四巻からなっ…

しょせん、家長の感傷〜『美しい星』(ネタバレあり)

吉田大八監督『美しい星』を見てきた。三島由紀夫の小説『美しい星』を映画化したものなのだが、主人公は高等遊民からテレビのお天気キャスターになっており、核兵器じゃなくて地球温暖化などの環境問題が人類の危機として問題になっている。自分たちは宇宙…

婆・婆・ランド〜『近代能楽集より葵上・卒塔婆小町』

新国立劇場で、三島由紀夫作、美輪明宏演出・主演の『近代能楽集より 葵上・卒塔婆小町』を見てきた。一言で言うと「婆・婆・ランド」だった。お婆さんがとんでもなく美しい恋の夢を見せるという作品で、まさに「夢を、見ていた」『ラ・ラ・ランド』みたいだ…

ちょっとアレに似ていますね〜『黒蜥蜴』(ネタバレ)

記事アップが遅れてしまったのだが、先週末に神奈川のKAAT劇場で『黒蜥蜴』を見てきた。実は去年の紅白で美輪明宏の歌をちらりときいて「この人ももうかなり年だし、声が出るうちに生で見ておかないとまずいんじゃないだろうか」と思って行ってきたのだが、…

ニューオーリンズ(6)『トルーマン、テネシーを語る』(Truman Talks Tennessee)

テネシーまつりの最後の観劇は『トルーマン、テネシーを語る』(Truman Talks Tennessee)。トルーマン・カポーティが友人だったテネシーの話を中心に、自分の人生や交友を語るという作品である。ジョエル・ヴィグという役者さんが作った一人芝居なのだが、本…