いやな男子校ノリみたいな話~『午後の曳航』

 オペラ『午後の曳航』を日生劇場で見た。三島由紀夫原作で日本が舞台だが、ハンス=ウルリッヒ・トライヒェル台本、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ作曲によるドイツ語のオペラである。指揮はアレホ・ペレス、演出は宮本亞門である。1990年に初演された作品だが、2005年に改訂されていて、このバージョンは日本初演だそうだ。

 あまり色を使わないセットが特徴的で、房子(北原瑠美)の着物や子どもたちの服など以外はかなり白黒メインの色調である。船と海のセットをはじめとして美術はけっこう抽象的だ。ヴィジュアルの凝った感じは原作者と演出家が同じだった『金閣寺』と雰囲気が似ている。

 少年である登(新堂由暁)が友だちにそそのかされて母親の再婚相手である船乗りの命を狙うというお話なのだが、どちらかというとイヤな男子校ノリみたいな感じがかなり前に出ている演出だと思った。カラーギャングみたいなイキった服を着ている少年たちが出てくるのだが、けっこう陰湿で、子どもっぽいわりに登をいじめて言うことをきかせるような方向性が強い。子どもたちの言っていることが「あるべき男っぽさ」を生煮えな形で押しつけるみたいな方向性で、やたら身体能力が高いダンサー陣が踊りで盛り上げているせいもあって、未成熟なのにマッチョで閉鎖的な良くないタイプの男子文化感が溢れている。これが演出のメインの要素というわけではないと思うのだが、けっこうジェンダーの点で興味深い演出ではと思う。