『白水社の本棚』、今回より「汗牛充棟だより」として連載が復活しました。ウィキメディアESEAPサミットのことを書いております。書誌情報は以下のとおりです。こちらから無料で見られます。
北村紗衣「汗牛充棟だより(14)ウィキメディアESEAP戦略サミット2025」『白水社の本棚』2025年夏号、10-11。
ヨーロッパシェイクスピア協会大会の'"Thou Ceaseless Lackey to Eternity": Time and Opportunity in Shakespeare's The Rape of Lucrece'セッションでエレナ・ペローネによる『ルークリース陵辱』ひとり芝居を見た。基本的に詩を最初から最後まで暗唱する形で、小道具は椅子だけである。ドラマティックな朗唱だが、当たり前だが非常に重い内容で、性暴力とその復讐としての政治体制変更への希望を描いている点では『プライマ・フェイシィ』とか『プロミシング・ヤング・ウーマン』のある種の原点とは言えるのかな…と思った。最後にルークリースが自殺するのでまったく救いがなくう、全体的にはちょっと #MeToo 風味に仕上げられているのだが、とはいえルークリースが実際に政体を倒すのには参加できず、主体性を奪われているというのは悲しいところだ。また、実際に音声で聴いて見ると、これは音読する詩ではない…というか、性描写も暴力描写も政治的な描写も露骨である上、凝った表現が使われていて一聴してわかりにくい表現もけっこうあり、ひとりで家でこっそり読んで(!)考えるタイプの詩だという印象を強く受けた。
ヨーロッパシェイクスピア協会大会の一部として、ファティマ・ヴィエイラとマティルデ・レアルのMulheres de Shakespeare (Shakespeare's Women、シェイクスピアの女たち)の舞台映像上映を見た。ポルトガル語の2人芝居で英語字幕がつく。
『テンペスト』でミランダが読んでいるプロスペローの本のうちのひとつがシェイクスピアのファースト・フォリオで、シェイクスピア劇の女性たちからミランダがいろいろ知識をもらい、ジェンダーや恋愛などについての考えをエーリアルと共有し…みたいな内容である。セリフは大部分がいろんなシェイクスピア劇からとっている。この種の女性キャラクターのセリフ総ざらいみたいなものは以前からあるのでそんなに珍しくはないのだが、これはプロジェクションや音楽をけっこう豊富に使っていてけっこう面白い小品になていると思った。
新宿シネマートにて7月21日(月・祝)16:10の回終了後、『タイムズ・スクエア』4Kレストア上映イベントに登壇します。
前日にはストレンジャーでも同じ映画の上映イベントをしますので、よろしくお願い申し上げます。
コインブラでもそこまで時間はなかったのだが(街の半分しか回れなかった)、一応まちあるき写真も撮った。