『ファーストボイス』を試写で見た。
1980年代が舞台である。福岡の出版社で働いていた恵(ファーストサマーウイカ)はひどいセクハラを受けた末に仕事を辞めさせられ、裁判を起こすことにする。引き受けてくれたのは女性のための弁護士事務所を目指して働いている朝日(綾瀬はるか)だけで、これまでセクハラについての裁判が起こされたことはなかったので先行きは厳しい。さらに恵は文春をはじめとする週刊誌からひどい攻撃にあう。
日本で初めてセクハラについて争った裁判である福岡セクシュアル・ハラスメント裁判をヒントにしているそうだが、とはいえ内容はかなり脚色されていて別物になっているということである。たしかに裁判の様子などはリアリティを重視するよりはけっこうすっきりわかりやすく整理されており、わりと王道の社会派エンタテイメントっぽい作りになっている。1980年代が舞台ということで着る物とか髪型とかもかなり時代劇っぽく、恵はスーツではなく自分が着たいと思うおしゃれな服で出廷する。
そういうわけでかなりしっかりした娯楽作なのだが、一方で恵が受けたセクハラはものすごくエグいもので、日本はいまだに性差別がひどい…ものの、今は少なくともこのレベルのセクハラはダメだと誰でも認識できるような時代にはなっていると思うので、その点では多少は世の中は良くなっているし、こういう勇気を出して戦ってくれた先達のおかげだと思う。恵がなかなか勇気を出せずに支援者の会に行けなくなったりする描写もあるのだが、このへんの心情の描写はけっこうリアル…というか、私も嫌がらせに関する民事裁判で原告席に座ったことがあるのだが、その時経験した気持ちにかなり近い反応を恵がしていて、娯楽作とはいえこのへんはしっかり現実的だと思った。とはいえ現代の日本でもまだまだセクハラはありふれていて、私も含めて多くの人が傷つき続けていることを考えると、なかなかきつい映画ではある。