新刊『学校では教えてくれないシェイクスピア』 をよろしくお願い申し上げます。

心あたたまるボディホラーサメパニック映画~『私がビーバーになる時』(ネタバレ)

 『私がビーバーになる時』を見た。

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 アメリカの地方都市ビーバートンに住む日系の少女メイベル(パイパー・カーダ)は動物が大好きで、自然を愛するおばあちゃん(カレン・ヒューイ)に育てられた。大学に入ったメイベルは、おばあちゃんとの思い出の池が道路工事でつぶされそうになるのを防ぐべく反対運動を始めるが、なかなかうまくいかない。メイベルは大学で意識転送によって動物に化けることができる装置が開発されているのを知り、この装置を使ってビーバーに化け、ビーバーのコミュニティに潜入するが…

 ピクサーアニメなのだが、子ども向けのかわいいアニメにしてはけっこう暴力的…というか、突拍子もないB級アクションみたいな娯楽性がある映画である。主要なキャラの殺害が2回発生し、しかもそのうちの1回は事故だがヒロインが下手人である。虫の王子タイタス(デイヴ・フランコ)まわりの展開はボディホラーみたいで、クローネンバーグが子ども向けのアニメを撮ったらあんな感じになりそうな気がする。中盤はヒッチコックの『』みたいになり、さらに途中からなぜかサメ映画になる(しかもサメが空から降ってくるので、サメ映画の中でもだいぶバカなほうのサメ映画なのではないかと思う)。最近、やっぱり変な設定のビーバー映画である『FEVERビーバー!』も公開されたが、スラップスティックな暴力が売りということで案外共通点があるかもしれない。

 ヒロインのメイベルは、まあ動物と話せるのでディズニープリンセスみたいなキャラクターではあるのだが、計画性がなく無鉄砲で、この欠点だらけなところが人間らしいとも言える(そういえばやっぱり暴力ディズニープリンセスみたいな人が主人公の『クレイヴン・ザ・ハンター』なんていう映画もあった)。敵役である市長のジェリー(ジョン・ハム)も、強引で欲張りで見た目にばかり気を遣うだいぶ困った人なのだが、極悪人というわけではなく、人間味はある。このへんのキャラクターの悪いところと良いところが哺乳類の王であるジョージ(ボビー・モイニハン)の、どんな生き物にもよいところがあるという信念をキーにして描かれており、全体的には心温まるお話…なのだが、一方で動物をすごく擬人化しているし、とくに終盤は人間にとって都合が良すぎる展開ではある。

4/15の13時頃からNHK『まんまる』にてシェイクスピアの話をします

 4/15の13時頃からNHKラジオ『まんまる』に出演してシェイクスピアの話をします。

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落語を芝居にした楽しい試み~『死神』

 紀伊國屋サザンシアターで『死神』を見た。有名な落語『死神』(これももともとはドイツあたりのおとぎ話を原作としている)の舞台化である。『死神』は落語の中でもホラーっぽさがある演目だと思うが、全体的にちょっとダークなオチがついたホラー風コメディという感じである。

 仕事もせずに酒を飲んで妻から見切りをつけられた八五郎(牧島輝)が、自殺をしようとしたところで死神(水野美紀)に声をかけられ、死神の助言でいんちき医者稼業みたいなものをすることになる。オチはちょっとひねりがあり、ダークなジョークという感じになっている。落語家の立川志の春も出演し、途中で落語っぽい趣向も入っている。

 全編、笑えるところが多くて面白おかしい芝居である。死神がそこそこしゃれた雰囲気の元気な女性で、ノルマを守るために四苦八苦しており(設定では死神にも本部があって業務遂行についてのしめつけがあるそうだ)、死神と言われて想像するような顔色の悪いものものしい高齢者とかではないところに意外性があってちょっと面白い。全編いろいろジョークがあるので、水野美紀が最初に登場した場面で、舞台上で吹き出してしまってしばらくセリフが続けられなくなるという珍事も出来した(これまで舞台を見ていて、プロの舞台でこういうのを見かけたのは2-3回くらいである)。そのへんも含めて楽しめるコメディである。

 

現実の政治が低レベルすぎると思えてしまった~『メアリー・ステュアート』(ネタバレ)

 『メアリー・ステュアート』をPARCO劇場で見てきた。シラーの有名戯曲をロバート・アイクが脚色し、小田島則子翻訳、栗山民也演出で上演したものである。

 わりと無機質な壁で囲まれたセット、十字だったりドアから長い光がさしていたりするようなちょっと凝った照明でアクセントをつけている。私はそもそもシラーのこの作品は、ドラマティックで見せ場はたいへん多いが、一方で「女の敵は女」みたいな雰囲気もあり、演出でどっちに転ぶかよくわからない芝居だと思っているのだが、この翻案はわりと政治劇っぽい演出であるように思った。全体的にはメアリー(宮沢りえ)とエリザベス(若村麻由美)の演技合戦だが、脇役陣も達者である。メアリーは大変な美貌で、既に3回も結婚しており、何度も男で失敗しているのだが、生まれながらの女王であるというプライドと、その美貌と気品ゆえに周りの人たちがかしづいてくれた経験ゆえになかなか政治的な立ち回りを身につけられない、よく言えば素直、悪く言えば統治者としての才覚には欠けた政治家である。恋の情熱にかられて殺人にかかわってしまったという加害者である一方、美貌のせいで男に利用される被害者でもあり、中盤ではけっこう不穏な性的強要を示唆する場面もある。一方でエリザベスは大変な苦労人であるため政治的センスがあり、美しく生まれが高貴なメアリーに対するライバル心がある一方、自分の政治的立場を優先するだけの判断力に富んでいる。このふたりを取り囲むいろいろな男たちの陰謀が渦巻く芝居である。若い男の廷臣たちは使えるものなら色気でも身分でもなんでも使い、中年以上の廷臣たちも忠誠心や野心など、それぞれこだわりがある。

 そういうわけでかなり複雑な陰謀渦巻く政治ドラマなのだが、最近の現実の政治のレベルがあまりにも低すぎるため、なんだか別世界のような高度な政治的駆け引きをしているように見えてしまった。陰惨な処刑で終わる宮廷陰謀劇で、あまり倫理的に全肯定できない政治家ばかり出てくるのだが、それでも「みんな頭いいしちゃんと政治やってるよな…」と思えてしまった。あまり政治的才能がないはずのメアリーですら、現代の政治家に比べるとずっとちゃんと政治家らしく振る舞おうとしているように見える。

ラジオ出演ふたつ+ウィキメディア・コモンズ写真アップ

 4月8日に午前8時頃からNHKラジオ『マイあさ!』に出演してアイスランド映画『女性の休日』のお話をし、夜の20時くらいから今度はTBSラジオ『アフター6ジャンクション』のシェイクスピア特集に出演して『ハムレット』のお話をしました(さすがに朝晩は疲れました)。この時にスタジオで宇多丸さんと古川耕さんの写真撮影を行い、許可を頂いてウィキメディア・コモンズにアップしました。宇多丸の記事写真はあまりにも低品質で顔がよくわからなかったのですが、もう少し百科事典らしいもの(私の撮影はあまりうまくありませんが)に差し替えました。[[古川耕]]はそもそも写真がなかったので(記事も非常に貧弱な状態ですが)、新しく入れました。

 

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