殺陣がとても良い~フロント・フット・シアター『リチャード三世』(配信)

 フロント・フット・シアター『リチャード三世』を配信で見た。殺陣の専門家であるローレンス・カーマイケル演出で、コックピット劇場で上演されたものである。おそらく2017年の公演だろうと思う。

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 シンプルな箱みたいなセットで、広報に4段くらい階段がある。衣装は現代のものである。幼い王子たちはパペットで表現されている。

 空間をめいっぱい使ったアクションが特徴で、初っ端から戦闘で始まる。殺陣の専門家が演出しているだけあってかなり戦いの場面がちゃんとしていて臨場感がある。また、主演のリチャードを演じるキム・ハーディをはじめとして演技は大変良く、全体に迫力とスピードがある。ティレルが王子を殺した後けっこうショックを受けており、そのティレルをなだめようと嬉しそうなリチャードがキスをするところなどは自分のカリスマ性を使おうとしつつちょっとやりすぎなところもあるリチャードの性格がよく表現されている。また、リチャードはいきなりエリザベス(ヘレン・ローズ・ハンプトン)にキスしてびっくりさせるということもしており、アン(ジュリア・パップ)とのやりとりも含めて、全体的にこのリチャードはわりと性的な威圧感のあるリチャードである。

 ただ、マーガレット(アンジェラ・ハーヴィ)が出てくるところがあんまりぱっとしないような気がする。マーガレットの台詞回しがけっこう地味で、おどろおどろしい呪いにせず、ナチュラルにしている分、迫力が足りないと思った。マーガレットまわりはもうちょっとけれん味のある演出にしてもいいのではと思う。