アイルランド文学

金と野心〜ヴォードヴィル劇場『理想の夫』

ヴォードヴィル劇場で『理想の夫』を見てきた。演出はジョナサン・チャーチで、言わずと知れたワイルドの有名作である。セットや衣装はウェストエンドらしい凝ったもので、音楽などもいろいろ工夫している豪華なプロダクションだ。 基本的には笑いのツボをお…

「鷹の井戸」の記事を作りました

日本語版ウィキペディアに英語版からの翻訳で[[鷹の井戸]]の記事を作りました。先日見た『鷹姫』がとても面白かったためです。

インターカルチュラルな舞台、はじけるマゾヒズム〜ケルティック能『鷹姫』

ケルティック能『鷹姫』を見てきた。アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツが能をもとに作った詩劇『鷹の井戸』を能として上演しやすいよう横道萬里雄が改作したもので、アイルランドと日本の国交60周年を記念する上演である。鷹姫役に梅若玄祥…

正攻法に人生がつらい〜Kawai Prooject『ゴドーを待ちながら』

こまばアゴラ劇場でKawai Project『ゴドーを待ちながら』を見てきた。私の指導教員である河合祥一郎先生の新訳で、演出も河合先生がつとめている。 おそらく私が今まで見た中では一番正攻法で丁寧な『ゴドーを待ちながら』である。セットは何もない舞台に木…

戯曲に内在するジェンダーステレオタイプの強化~ナショナル・シアター『鋤と星』

ナショナル・シアターで『鋤と星』を見てきた。1926年に初演されたショーン・オケイシーの有名作で、1916年にアイルランドで起こったイースター蜂起を扱った作品である。ただ、この作品は蜂起を英雄的に描いた作品ではなく、突然街が戦場となって右往左往す…

もう少し田舎くさいほうが…『イニシュマン島のビリー』(ネタバレあり)

マーティン・マクドナー作、森新太郎演出の『イニシュマン島のビリー』を見てきた。この作品はダブリンでドルイドカンパニーの上演を見たことがある(ダニエル・ラドクリフ版は見ていない)。 1930年代はじめのアイルランド、ロバート・フラハティ監督がドキュ…

ボストン(3)アメリカルネサンス学会3日目

学会三日目は午前中のアイルランドとルネサンスについてのセッションに出た。ツダりは以下の通り。 アメリカルネサンス学会2016、3日目

バラバラの肉体を取り戻す〜マーティン・マクドナー『スポケーンの左手』(ネタバレあり)

シアタートラムでマーティン・マクドナーの戯曲『スポケーンの左手』を見てきた。2010年に初演された作品を日本語にし、小川絵梨子演出で上演している。小川絵梨子は既に何度かマクドナーの作品を演出したことがあり、かなりこなれていると思う。 舞台はあん…

アイルランド人にも軍人にも見えないよ〜紀伊國屋サザンシアター『ヒトジチ』

新宿の紀伊國屋サザンシアターで、ブレンダン・ビーアンの『ヒトジチ』を見てきた。1950年代末に初演された有名な芝居なのだが、正直演出が全然ダメだったと思う。 舞台はダブリン。若いIRAメンバーが北側のベルファストで処刑されるというニュースが流れる…

おっさんもおばさんも恋したい!〜オスカー・ワイルド『真面目が肝心』

ハロルド・ピンター座でオスカー・ワイルドの『真面目が肝心』(The Importance of Being Earnest)を見てきた。言わずと知れたワイルドの大人気戯曲なのだが、意外なことに舞台では初めて見た。 全く批評を読まずに行ったので、セッティングを見て「あれ、こ…

若いのに、こんななのか〜東京乾電池『ゴドーを待ちながら』

ザ・スズナリで劇団東京乾電池の『ゴドーを待ちながら』を見てきた。柄本佑と柄本時生主演ということで、ウラジミールとエストラゴンがかなり若い。 非常にちゃんとした『ゴドー』だと思ったのだが、とりあえず柄本兄弟が出てきた瞬間になんともいえない出オ…

リアルIRA〜世田谷パブリックシアター『ビッグ・フェラー』

世田谷パブリックシアターで森新太郎演出の『ビッグ・フェラー』を見てきた。これ、ロンドンで初演を見て、訛りまくった英語がよくわからなかったわりには非常に面白かったのだが、あんまりお客さん入ってなかった…んだけど、セタパブ公演はほぼ満席でびっく…

にせカップルの末路〜『ロンサム・ウェスト』(ネタバレあり)

新国立劇場でマーティン・マクドナー作、堤真一・瑛太主演の『ロンサム・ウェスト』を見てきた。これ、戯曲読んだことがあるつもりだったのだが、見に行ったらなんか別の戯曲と勘違いしてたっぽく、原作未読。 お話はアイルランドの西の田舎、リーナンを舞台…

ベケットはつらい。人生もつらい。でもそれはくだらないってことじゃない〜サミュエル・ベケット『ソロ』

シアターχで、アイルランドの劇団マウス・オン・ファイアによるサミュエル・ベケット『ソロ』公演を見てきた。ベケットの比較的短い一人芝居、『わたしじゃない』『モノローグ一片』『クラップの最後のテープ』を連続上演するというもの。 一言で言うと、感…

『ザ・コミットメンツ』〜原作に比べると、ただのフィールグッド?

パレス座でThe Commitments『ザ・コミットメンツ』を見てきた。 これ、原作はアイルランドの人気作家ロディ・ドイルの小説で、映画が大変有名である。映画は見れなかったのだが、小説だけは読んでいった。おれたち、ザ・コミットメンツposted with amazlet a…

洗練と伝統芸能の間で〜『ザ・アイリッシュダンス 〜ラグース〜』

蒲田の太田区民ホールで『ザ・アイリッシュダンス 〜ラグース〜』を見てきた。 ラグースは主にアイルランド西部のミュージシャンとダンサーを中心にしたグループで、伝統的なアイルランド音楽とアイリッシュダンスを演奏する。『リヴァーダンス』みたいにス…

みどりのクマが生き別れの姉妹に出会う〜日本橋丸善アイルランドフェア

職場の向かいでやっている日本橋丸善のアイルランドフェアにいってきた。テキスタイルや小物が中心の小展示だけどけっこう面白い。 こ、これは… ダブリンから連れて帰ってきてうちに住んでいるエリンちゃんの生き別れになった姉妹ではないか!! ↓↑これがう…

John Kerrigan, Archipelagic English: Literature, History, and Politics 1603-1707

John Kerrigan, Archipelagic English: Literature, History, and Politics 1603-1707 (Oxford: Oxford University Press, 2008)を読んだ。 Archipelagic English: Literature, History, and Politics 1603-1707posted with amazlet at 13.08.12John Kerriga…

もうフェミニストじゃないなんて言わせない!キャトリン・モラン、How to be a Woman(女になる方法)

キャトリン・モラン(Caitlin Moran)の自伝的エッセイ、How to Be a Woman「女になる方法」(Ebury Press、2011)を読んだ。とにかくユーモアがあって笑えるので本当にオススメ。 キャトリン・モランはウォルヴァーハンプトンのカウンシルハウスで育ったアイリ…

かなり気合いの入った18世紀アイルランド演劇の史料集〜The Dublin Stage, 1720-1745

本日はJohn C. Greene and Gladys L.H. Clark, The Dublin Stage, 1720-1745: A Calendar of Plays, Entertainments, and Afterpieces (Bethlehem: Lehigh University Press, 1993)をご紹介。 これは通読するための研究書ではなく18世紀ダブリンの演劇に関す…

ロンドンアイルランド研究セミナー、ショーン・キャンベル'Ambivalent Sounds: Irish Diaspora Musicians in England'

昨日は今学期二回目(一回目は行かなかった)のロンドンアイルランド研究セミナー、ショーン・キャンベルの講演'Ambivalent Sounds: Irish Diaspora Musicians in England'に行ってきた。この人、この本の著者らしい。 デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ、…

ドルイドマーフィ(2)『闇のホイッスル』(A Whistle in the Dark)〜アイルランドのヤクザ一家の興廃を超パワフルに描いた芝居だが、家父長制を女性抜きで描くってそれは無理があると思うの

ドルイドマーフィ二本目『闇のホイッスル』(A Whistle in the Dark)をハムステッド座にて観劇。 テーマは集団間の暴力で、コヴェントリーに移民してきたメイヨー出身の家族が主人公。教育のある長男マイケル・カーニーはイングランド人のベティと結婚して家…

ドルイドマーフィ(1)『帰郷の会話』(Conversations on a Homecoming)

ゴールウェイのドルイドシアターカンパニーが「ドルイドマーフィ」と題してアイルランドの有名な劇作家トム・マーフィの三作品をサイクル劇として上演しており、これがハムステッド座で一週間くらいだけの限定上演でやってくるということで見に行ってきた。…

ナショナルシアター、オリヴァー・ゴールドスミス作『負けるが勝ち』(She Stoops to Conquer)〜『ハングオーヴァー』なんかまだまだ甘い!18世紀の諷刺喜劇のこのメチャクチャぶりを見よ!

ナショナルシアターでアイルランドの劇作家オリヴァー・ゴールドスミス作の18世紀の有名戯曲『負けるが勝ち』(She Stoops to Conquer)を見てきた。演出はジェイミー・ロイドで、この間のシェリダンの『悪口学校』(同じく18世紀、アイルランドの劇作家の作品)…

オールドヴィック『西の国のプレイボーイ』〜ロバート・シーハンはすごくステキだ、しかしそれだけでいいのか、という問題

オールドヴィックでジョン・ミリントン・シングの『西の国のプレイボーイ』を見てきた。今んとこ私が超注目しているアイルランドの若手、ロバート・シーハンの舞台デビュー作。 日本ではあまり馴染みがないと思うが、この戯曲は英語の芝居(およびアイルラン…