全く救いのない芝居~『ラフタリーの丘で』

 マリーナ・カー『ラフタリーの丘で』を見てきた。俳優座スタジオでの公演である。

 アイルランドの田舎にある農場が舞台である。ラフタリー家は横暴な父親のレッド(加藤佳男)、娘のダイナ(荒木真有美)とソレル(髙宮千尋)、息子のデッド(齋藤隆介)、祖母のシャローム松本潤子)からなる。デッドは精神の病気で牛小屋に住んでおり、シャローム認知症で徘徊癖がある。ダイナはどうも父親から性的虐待を受けているらしい。ソレルは近くの谷に住んでいるダーラ(山田貢央)との結婚を控えている。

 個人的な趣味だが、私が全く好きではないタイプの芝居である。とにかく救いがなくて暗くて笑うところがない。こういう芝居に意味があるのはわかるが、私はただただ状況が悪化していく様子だけを「現実」として提示する作品は芝居でも映画でもあまり面白いとは思わないので、好みではなかった。また、私はポストMeTooの時代にこういう芝居を上演する意義があまりピンとこなかった…というか、この芝居が初演された2000年前後だとたぶん非常に意義があったのだと思うのだが、2023年に見ると性暴力の描き方とかがけっこうひと昔前の感じではという気がした(今ならああいうふうにグラフィックに提示しないと思う)。