キャスト変更で印象も変わった~『海をゆく者』

 『海をゆく者』を見てきた。2014年の上演を見ているのだが、今回はキャスト変更がある再演である。

 セットなどはだいたい似ているので見た目の印象はそんなに変わらないのだが、リチャード役が吉田鋼太郎から高橋克実に変わったのがかなり大きい。吉田リチャードは年をとって病気になるまでは、ぼーっとしたところや抜けたところはあるが意外と真面目で世間体なども気にするタイプだったように見えるのだが、高橋リチャードはたぶん若い頃から徹底的にちゃらんぽらんで頼りなくておちゃらけていて、それでいて善良そのものの人だったと思われる。こういうちゃらんぽらんな人にこそ神の愛が注がれる…というのはいい話だ。この頼りがいも悪意も気取りもゼロのリチャードのおかげでなんとなく他のキャストもそれに引きずられてお人好しかつホリデー気分という感じになっており、そのぶん真面目そうなロックハート小日向文世)との対比が際立つようになっている気と思う。陰気そうなロックハートが雰囲気の飲まれて酒を飲み過ぎてしまうところが可笑しい。