ジョンとヨーコの別居期間を追ったドキュメンタリー~『ジョン・レノン 失われた週末』(試写)

 『ジョン・レノン 失われた週末』を試写で見た。ジョンとヨーコが別居し、ジョンがアシスタントで恋人だったメイ・パンと暮らしていた18ヶ月間を追ったドキュメンタリーである。

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 メイ・パンとジョンの話はファンの間ではけっこう有名なのだが一般的にはあまり知られていないので、こういうドキュメンタリー映画ができたことは意義があることだと思う。メイとジョンのなれそめは極めて奇妙で、ヨーコが独り身だったアシスタントのメイにいきなりジョンと付き合ってくれと頼んだことから始まる…ということで、現代の感覚だとセクハラだし当時としても妻が夫との交際を頼んでくるとかいうのは常識外れもいいとこだと思うのだが、異常に押しの強いヨーコのせいで、ジョンもメイもあれよあれよという間に巻き込まれてしまう。最初はいい迷惑みたいな感じだったジョンとメイだが、2人ともわりと個性的な人でうまがあって、だんだん本気でお付き合いして幸せに過ごすようになっていく。

 全体的に、ヨーコの変わり者ぶり、コントロールしたがる押しの強い性格が強調されている。メイにジョンと付き合うよう頼んだのも、ジョンが目の届くところで不倫をするのがイヤで、自分と同じタイプでもう少し付き合いやすそうな女性と付き合えばコントロールができると思ったのだろう…という感じだ。ところがヨーコはメイとジョンがどんどん仲良くなると嫉妬して仲を裂こうとする。メイにとってはヨーコはものすごく迷惑な人だったろうし、一方でジョンはいろいろ欠点はあってもチャーミングなボーイフレンドではあったようだ。ジョンもメイのおかげで非常に助かっていたようで、一筋縄ではいかない非常に奇っ怪な大人の男女関係を描いた不思議な作品になっている。最近のミュージシャン映画は「モテること」の利点と問題にあまりちゃんと向き合わなくなっている気がするのだが、この映画はそのへんを比較的ちゃんとやっている気がするのがいい。まあ、アクの強い人が集まったら人生こういうこともあるんだろうな…と思うし、メイは気の毒に見えるが、自立した大人として今も立派に振る舞っているメイを見ると「気の毒」とか思うのはちょっと失礼なのかも、とも思う。