全然面白くなかった~『レノン』(配信)

 クロアチア国立劇場で上演されたオペラ『レノン』を配信で見た。元クロアチア大統領で作曲家であるイヴォ・ヨシポヴィッチの新作で、5月26日の公演の映像である。イヴァン・ヨシプ・スケンデル指揮、マリナ・ペジョビッチ演出によるものである。

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 ヴィジュアルは悪くはないのだが、とにかく全然面白くない。ジョン(Domagoj Dorotić)が死ぬところから始まって、そこから過去に飛んだりするのだが、断片的にいろいろなものが出てくるだけであんまり全体が有機的につながっておらず、何をしたいのかあまりよくわからない。無調で全然ビートルズっぽくはない音楽が使われており(途中で少しだけ"Give Peace a Chance"っぽくなったりするところはあるのだが)、ランダムに歌詞の引用が出てきたりはするのだが、あまり時代の雰囲気は無い。チャップマン(Ozren Bilušić)にもけっこう歌うところがあるのだが、なんだか表層的なヤバいことしか言っていないように見える殺人犯にこれだけ歌をあげて何を描きたいのかも不明である。一番酷いのはヨーコ(Marija Kuhar Šoša)の描き方で、日本人だからといってわざとらしい着物と和風の傘で出してくるのもオリエンタリズム的でひどいし、ヨーコの音楽活動がダメでしたみたいなとこばかり描いているのも全くどうかと思う(私はヨーコの音楽は別に全然好きではなく、美術作品のほうがはるかにいいと思うが、それでもこの描き方は偏見に満ちていると思った)。あまり見る価値は無い作品である。