すごくマスクっぽい再構成~ギリシャ国立オペラ『妖精の女王』(配信)

 ギリシャ国立オペラ『妖精の女王』を配信で見た。英語上演で、ギリシャ語と英語の字幕がつく。2018年に上演されたものである。

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 ヘンリー・パーセルの有名作で、本来はシェイクスピア『夏の夜の夢』の劇伴音楽的なものである。しかしながらこれは王政復古期特有の複雑な演目で、だいたい『夏の夜の夢』をそのまま上演し、それにパーセルが作曲したマスク(仮面劇)がつくというもので、別にパーセルは『夏の夜の夢』をオペラ化したわけではない。マスクの内容はあんまり本筋に明確には絡んでおらず、全体的なテーマとして愛を寿ぐというようなところが共通している。

 『妖精の女王』を『夏の夜の夢』を含めて全部上演すると大変な時間がかかるのだが、この翻案は音楽のところだけ抜き出して再構成したもので、曲順などはふつうの順番とは違っている。ダフネとアポロが森で迷い、最後は愛と和合が祝福されるまでを描いているらしいのだが、正直オペラやモダンダンスを見慣れていない私にはあんまり話がわからなかった…のだが、全体的に大変マスクっぽく、華やかな衣類に身を包んだ寓意的な人物が出てきて歌ったり踊ったりするバロック的、祝祭的な演目だと思った。オペラとしてはわりと規模の小さい舞台だと思うのだが、古楽器を使ったこじんまりとしたオーケストラに紗幕や照明をうまく使っている。パーセルの音楽はやはり非常に良かった。