たくさん面白いところがあるが、個人的に苦手なところも~シャウビューネ『オーランド』(配信)

 シャウビューネ『オーランド』を配信で見た。以前に東京芸術劇場で見たサラ・ルールのバージョンとは別のもので、アリス・バーチ翻案、ケイティ・ミッチェル演出のものである。ベルリンのシャウビューネなのでもちろんドイツ語で、英語字幕がつく。2019年に上演されたものである。

www.schaubuehne.de

 全体的に大変たくさん映像を使った上演で、上にスクリーン、下に映像を撮れる舞台があって、事前に撮影した映像も下で撮っている映像も上のスクリーンに映せるようになっている。さらに舞台の脇に放送ブースがあり、ウルフの書いた地の文を翻案したような内容をそこから大量にライヴのナレーションで放送する。マルチメディアを使った演劇で、サリー・ポッターの映画からの影響はかなりありそうだ。技術的には大変洗練されたプロダクションだと思う。

 時代がかった衣類や設定と現代の設定を組み合わせたちょっとデレク・ジャーマンっぽい意図的なアナクロニズム演出や、原作にもあるちょっと皮肉なユーモアを生かした展開や台詞は面白い。とくにオーランドーが女になってからは笑えるところが多く、かつて男だったオーランドーが男たちの偏見に気付いて辟易しながら生きていく様子が面白おかしく描かれている。オーランドーが男の時も女の時もかなり性的にアクティヴで、それを楽しいこととして描いているあたりも良い。

 ただ、こういうスタイルが好きな人がたくさんいるのはわかるのだが、個人的な好みとして、役者があまりしゃべらず、ナレーションでほとんどを語ってしまうというお芝居は私はそこまで魅力的でないと思うところもあった。台詞を少なくすると役者の身体がポイントになってくるというところはあり、ジェンダーと肉体に関するこういう芝居ではコンセプトとして狙ってることなんだろうとは思うのだが、一方で役者の声が少なくなるというのは、私は身体性の表現として好きではない。声と身体をうまく使っているという点では、芸劇版のほうが良かったかなーとも思う。

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