表象文化論学会第14回大会、パフォーマンス「ARICA Presents『終わるときがきた』──ベケット『ロッカバイ』再訪」

 京大で開催された表象文化論学会第14回大会1日目に行ってきた。企画委員長なので(?)ちゃんと実況してまとめた。

togetter.com

 表象文化論学会の大会ではパフォーマンスが上演されることになっているのだが、今回はなんと開催校からのコミッションでARICAに作ってもらった1回かぎりの新規制作演目が上演された。「『終わるときがきた』  − ベケット『ロッカバイ』再訪」ということで、ベケット『ロッカバイ』の翻案である。これは京大芝蘭会館稲盛ホールという場所の窓の構造などにあわせてきわめて緊密に作られた演目で、ふつうなら20分くらいで終わってしまう『ロッカバイ』を1時間以上かけてやるというものだ。『ロッカバイ』は揺り椅子に座っている女のモノローグなのだが、新作では揺り椅子ではなくふつうの椅子に座っている。わりと作り込んだ机と椅子のセットの後ろにスクリーンがあり、椅子に座って演技している女(安藤朋子)とそっくりの映像が後ろのスクリーンにもうつっている…のだが、同じ台詞が反復されるたびに、だんだん舞台上の女と映像の動きにずれが生じる。ベケットの特性のひとつである「芝居を見るつらさ」と「長い人生のつらさ」の重ねあわせが存分に発揮された作品になっている一方、少しベケットから離れた新しいところもある。まあ見る人を選ぶしここまで「つらい」演目だと相当好みがあると思うのだが、個人的には大変よかったと思う。1回しか上演されないとは残念だ。