トーシロの集まりふたたび~『ラスト・ムービースター』(ネタバレ注意)

 試写会で『ラスト・ムービースター』を見てきた。バート・レイノルズの遺作である。

 かつてはアクション映画のスターとして大人気だったヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)は、引退してロサンゼルスで老犬とともにひとりで静かに暮らしていた。愛犬が病死し、落ち込んでいたところにナッシュヴィルの映画祭から功労賞受賞のお知らせと招待が届く。あまり乗り気でないヴィックだが、友人ソニー(なんとチェヴィー・チェイス!)のすすめで行くことにする。ところがナッシュヴィルの映画祭は映画オタクどもが手作りで実施しているショボいファン祭りで(一応ナッシュヴィルには大きな映画祭があるのだが、それではなくフリンジみたいなほうだった)、アテンドのリル(アリエル・ウィンター)は非協力的、ヴィックは怒って映画祭でひどく無礼な振る舞いをするが…

 

 バート・レイノルズ知名度や業績の点ではちょっとビミョー感のある老いた映画スターを演じるという、「いや、それは本人なのでは」というリアリティで成り立っている作品である。バート・レイノルズは大スターだし、レイノルズの映画が好きな人は今でもたくさんいるが、作中でも言及されているクリント・イーストウッドロバート・デ・ニーロに比べると名作と呼ばれるような誰でも知っている代表作が少なく、ちょっとカルト映画っぽいもの、知る人ぞ知るというような作品が多い。この「スターなのに誰でも知ってる名優というわけではない」感があまりにも自然に醸し出されており、ここがこの作品の魅力になっている。

 お話としては単純でそこまで新しいところはない作品で、しかも日本未公開のA Bunch of Amateurs (2008、『トーシロの集まり』)にコンセプトがそっくりである。これも年をとり始めた落ち目のスターが『リア王』の主演だということでイギリスの「ストラトフォード」に渡ったところ、似た名前の別の町で田舎の劇団の公演に呼ばれただけだった…という話で、バート・レイノルズはこんな役ばっかりやってるようだ。ただ、『ラスト・ムービースター』のほうがちょっと洗練されており、映画オタクたちの手作り素人映画祭の描き方などはけっこうリアルである。金をかけずにパブで開催し、ネットで集客するこのオタクイベントみたいな映画祭はけっこう魅力があり、おそらくここに出てきている映画オタクどもと同類である私からするとすげー楽しそうでいい祭りじゃないか、行ってみたいな…と思えるのだが、ハリウッドの派手なスタイルにかぶれているヴィックには非常にくだらないものにうつってしまう。

 

  なお、この映画はベクデル・テストはパスしない。