『ガッジョ・ディーロ』デジタルリマスター版を試写で見た。1999年に公開されたトニー・ガトリフ監督作のリマスター版である。
映画はルーマニアのどこからしい田舎で青年ステファン（ロマン・デュリス）がうろついているところから始まる。ステファンはどうやらノラ・ルカなる歌手の情報を探しているらしいのだが、現地の言葉もしゃべれないし、全くうまくいきそうにない。ひょんなことからステファンは言葉も通じないのに息子がつかまって落ち込んでいるロマのおじさまイジドール（イシドル・セルバン）に気に入られ、一緒に暮らすことになる。
ステファンがロマのコミュニティでいろいろ怪しまれるところが、まるで現実世界で非ロマがロマに対して抱いている偏見を裏返しているような感じで、そのあたりはけっこう諷刺的だ。全体的に音楽に満ちた映画なのだが、今ならステファンはネットでノラ・ルカを探しまくるだろうな…と思うし、全体的にインターネット文化以前の音楽カルチャーを描いた映画だなという感じがする。主演の数名以外はほぼ素人だということなのだが、演技などは驚くほど自然である。ただ、途中のセクハラっぽい場面などは要るのかな…という気がした。
