ちょっと統一感がないように見えるところも…『ロミオとジュリエット』

 有楽町よみうりホールで『ロミオとジュリエット』を見てきた。井上尊晶演出で、20日まで中止だったので見に行けないかもと思っていたのだが、ベンヴォーリオ役もバルサザー役の田中亨がやるということで上演再開となった。最後には田中亨も含めて若い男優陣のアフタートークもあった。

 全体的にはけっこうオーソドックスな演出なのだが、少し全体の統一感が無いように感じられるところもあった。三段の柱がついた(コロッセオっぽい)バルコニーのような構造物が後ろにあるセットで、衣装はわりとルネサンス風だが現代っぽい要素もある…もののわりと時代的っぽい感じなのだが、終盤で電気で光る薬局の看板とか現代の警察が使うような黄色いテープなどが出てきて、ちょっとヴィジュアルの統一感がないように感じた。最後にジュリエット(藤野涼子)が自害するところで血じゃなくて空気みたいなのがシュポっと飛ぶところは何をしたいのかちょっとよくわからなかった。

 それ以外はあまり奇をてらったところは無い演出なのだが、ちょっと通常と違うのはロミオ(高杉真宙)がティボルト(三浦獠太)やパリス(佐伯大地)を殺すところで、ほとんど丸腰になっているような疲弊した相手にしつこく打ちかかって殺しているところである。ロミオがめちゃくちゃに打ちかかって事故みたいな感じで相手が死亡することも多いと思うのだが、この作品のロミオはけっこう怒ると頭に血が上って手がつけられなくなるタイプなのか、ちょっと残酷な殺し方をしている。また、ジュリエットは序盤では大きな人形をベッドで抱えている子どもっぽい少女だが、ロミオと結ばれてからはしゃべり方が一段と大人っぽくなって、かなり成長して覚悟を決めているように見える。