美化されていない自閉症の主人公とその家族~『マイ・ファミリー~自閉症の僕のひとり立ち』(試写)

 モニーク・ノルテ監督『マイ・ファミリー~自閉症の僕のひとり立ち』を試写で見た。オランダに住む42歳の自閉症のケース・モンマが自立を目指す様子を撮ったドキュメンタリー映画である。

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 ケースは絵を描くのが得意だが、音に反応する癖があり、こだわりも強くて日常生活もなかなか大変である。両親の家の近くにある離れに住んでいたが、新居に引っ越す準備を始める…ものの、食事や睡眠はなかなか両親から離れてやることができず、引っ越しても結局寝に帰るみたいな暮らしをしている。しかしながらどんどん両親は年老いており、父親は入院、ケースが大好きな母もだんだん弱ってくる。ケースの家族は少しずつでもケースを自立させようとするのだが、なかなか完全な自立には至らない。

 ケースもその家族も全く美化されていないのがいい。ケースはけっこうわがままなママっ子で、女性に世話してもらいたがるあたり、発達特性だけではなくちょっとジェンダーのほうで「男子」っぽいふるまいをするな…と思うところもある。それでも自立をしようとしつつ、急速に進めるのは無理で一歩一歩前に踏み出し、たまに戻ったりもする…という感じだ。家族のほうもケースを大事に思っているのだが、際限なく世話することはできないし…という感じの距離感である。このあたりが大変現実的だ。