終盤の脚本が整理されていないと思う~『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』(ネタバレあり)

 ツヴァ・ノヴォトニー監督『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』を見てきた。

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 ブリット=マリー(ペルニラ・アウグスト)は63歳で、長きにわたり清潔好きで規律正しい完璧な主婦として夫のケント(ペーター・ハーバー)と暮らしていた。しかしながら夫の浮気が発覚し、ブリット=マリーは家を出て地方の村であるボリのユースセンター管理人として働くことになる。ユースセンターの子供たちのため、全く知識のないサッカーのコーチをつとめることになったブリット=マリーは試行錯誤しながら村の人々と親しくなっていく。

 ブリット=マリーのキャラクターなどは大変面白く、細かい描写にユーモアもあるのだが、脚本があんまり整理されておらず、とくに終盤は話の進み方が唐突だという印象を受けた。ブリット=マリーが引っ越してきてすぐ警官のスヴェン(アンデシュ・モッスリング)とのロマンスが始まるあたりはちょっと急だと思ったし、さらにスヴェンの物わかりが良さ過ぎるのではという気もする。一方で盲目の元女子サッカー選手バンク(マーリン・レヴァノン)と、サッカーコーチ前任者だったその亡き父親である「オヤジ」さんの話についてはあんまり掘り下げられていない。たぶんスヴェンとの描写を減らしてオヤジさんとバンクについてはもっと背景を描いたほうがよいのではないかと思う。さらに、最後のところでサッカーチームが試合に出られないかもという危機の時、チームのリーダー格であるヴェガがブリット=マリーをいろいろ諭してやる一方で、バンクが昔のコーチライセンスを引っ張り出してきてトントン拍子に問題が解決してしまう。このあたり、ブリット=マリーが他人の世話になりすぎていて、あんまり自分の意志で人を助けるとか自立した判断をするとかができていないうちに話が進んでしまうような印象を受けた。