全然面白いと思わなかった~『ベイビー・ブローカー』(ネタバレあり)

 是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』を見た。

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 赤ちゃんボックスに子どもを置いていったソヨン(イ・ジウン)は、ふとしたことから赤ん坊を売ろうとしていたサンヒョン(ソン・ガンホ)とドンス(カン・ドンウォン)に出会い、養親に子どもを売るための旅に同行することになる。ところが子どもを売る商談はなかなかまとまらない。ドンスが育った保護施設に寄った際、サンヒョンやドンスと一緒に暮らしたがっている施設の子どもであるヘジン(イム・スンス)まで勝手についてきてしまう。さらに刑事のスジンペ・ドゥナ)は執拗にこの一行を追っており、現行犯逮捕を目指していた。

 母性を母親だけに押しつけるような描き方を避けようとしているのはわかるし、圧倒的に親らしくなっていくサンヒョンを演じるソン・ガンホをはじめとして役者陣の演技はいいのだが、一方で落とし方が全然、面白いと思わなかった。終盤でソヨンが生まれてきてくれたことにお礼を言うあたりから母性神話が戻ってきている感じがあり、それ以降がちょっとなぁ…と思う。とくに刑事のスジンがかなり重要な役なのだが、スジンと相棒のイ刑事(イ・ジュヨン)の描き方の奥行きがサンヒョンやソヨンたちに比べると足りておらず、なんか時々安っぽい刑事ドラマみたいに見えるところもある。それでもペ・ドゥナの存在感でスジンがなんとなくクィアな感じの女性として立ち上がってくるのだが、そんなそこはかとなくクィア感のあるスジンが最後、あんまり説明もなく母性をどどーっと引き受けてしまうという落とし方で、見ていてそんな虫の良い話があるかよ…と思った。また、スジンとイ刑事は出てきたら必ず何か食っており、スジンは基本的に飢えてガツガツしているのだが、最後の子どもと遊ぶところは何も食わずに海辺で遊んでいて、子どもがいれば飢えてガツガツした感じがなくなる、みたいな短絡的な描写も好きになれなかった。