箱庭のリチャード~G.Garage///『リチャード二世』

 G.Garage///による河内大和演出『リチャード二世』を見た。

 セットは枯山水の庭みたいな感じで、真ん中に岩があり、三方が客席に囲まれた長方形の舞台の回りには小石がまいてある。『リチャード二世』には庭師が出てくる有名な場面があるので、この場面の要素を強調したセットである。おそらく原作戯曲では庭は国を象徴していると思われるので、セットじたいが箱庭化された国だとも言える。

 削ぎ落とされてはいるがわりと正攻法の『リチャード二世』で、リチャード(河内大和)やボリングブルック(鈴木彰紀)をはじめとする登場人物の心情や性格をきちんと見せることに重点を置いている。わりと性別を問わずみんなかなりベタベタボディタッチして感情を露わにする感じの演出で、最初は少し叫びすぎで台詞や動きが硬い気もしたのだが、だんだんのってきて良くなっていった。主役級の2名はもちろん、周りの人物まできちんと丁寧に描かれているのがよい。本作のオーマール(横井翔二郎)は相当リチャードに忠実で、リチャードの苦境に対していつも悲しそうな顔をしており、心配のあまりやすやすと陰謀に巻き込まれてしまう。オーマールはいろいろな描き方があるキャラクターだと思うのだが、このプロダクションでは政治的にはちょっとアホなのかもしれないがけっこう良い人に見える感じで作られている。バゴット(齋藤慎平)がかなり活躍する演出で、最後にリチャードを殺しに行くのにまで参加しており(このプロダクションではパーシーとバゴットが暗殺に赴くのだが、原作では全然違う人物が出てくる)、変わり身の早さが恐ろしい感じの人物になっている。

 ちょっと気になったところとしては、庭師陣がかなり熊手(だと思うのだが、正式名称は違う園芸器具なのかも)を使いあぐねている感じだったので、庭で用いる設定の熊手はもっと使いやすいやつにしたほうがいいのではないかと思う。あと、たまに馬に乗る仕草をして長方形のセットをぐるっと回って役者が退場するところがあるのだが、これはそういうことをせずにあっさり退場したほうがすっきりするのではないかと思った。わりとスピーディな演出なのに、わざわざセットの周りをまわって退場するとそこだけ場面の入れ替えがちょっともたつく感じがあるので、場面転換のスピード感を重視したほうがいいと思う。