奈良(3)美術館めぐり

 最終日の午前中は美術館に行くことにした。まずは松伯美術館で「万葉の世界 展~「額田女王」挿絵原画を楽しむ」を見てきたのだが、これは井上靖額田女王』に上村松篁がつけた挿絵の展示会だった。お話がちゃんとわかるように展示されており、これ以外にも上村松園の絵などがたくさんあって楽しかった。

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松伯美術館の竹林。

 この後、大和文華館で「新春を迎えて―梅と桜の美術―」を見てきた。これも春らしい展示でなかなか良かった。  

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和文華館の梅。ちょっとほころんできてる。

 最後に、西大寺にあるガドー・ド・ボワでケーキを頂いた。

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奈良(2)飛鳥ツアー

 全ての締め切りをかなぐり捨てて、前から行きたかった飛鳥に行ってきた。なんと、奈良女の専門家が案内して下さるという豪華ツアーだった。

  本薬師寺遺構。

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 甘樫丘。

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 明日香村埋蔵文化財展示室。これは宮にあった井戸の遺構だそうな。

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 飛鳥坐神社

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 飛鳥寺。大仏は火災などで再建されており、どの程度がオリジナルなのか議論があるそうで、お寺のほうではかなりの部分がオリジナルだという解説を出していたのだが、専門家によるとこちらの説は若干眉唾だそうな(こういう学説のアップデートができるのが、専門家と一緒に歩くときのいいところだ)。とはいえ、魅力のある仏像だ。

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 亀形石造物。悲しいことに、昨年の台風で脇の設備が壊れており、まだ予算がなくて直せていないらしい。飛鳥の大事な遺跡も直せないで美しい国とか言ってんのか…

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 いたるところに遺構とか宮の跡地とかがあるので、安心できない。

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 このふしぎな三角っぽい区画、なんと蘇我家のお屋敷の池があったところのあとで、だから田畑の区切り方がおかしくなっているらしい。史料からここに屋敷があったと裏付けることができるのだそうだ。すごい!

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 石舞台古墳!!推定被葬者は蘇我馬子らしい。

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 天武・持統天皇陵。入れない…

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 高松塚古墳。資料館もあり、壁画の複製などを見ることができる。

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  キトラ古墳。模型の形がちょっとあやしい。

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 帰りにのったかっこいい電車、青のシンフォニー号。

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 やはり専門家の解説があると、ふつうなら全く気付かないようなところにも史跡があるのがわかって大変面白かった。ものすごく充実した飛鳥ツアーだった。

第14回女性史学賞授賞式

 奈良女子大学で第14回女性史学賞授賞式に出席してきた。

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ポスターがある。

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学内に鹿が!

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会場の記念館。すごくきれいな建物で緊張した。

 授賞式では指導教員だった河合祥一郎先生や審査員の先生方をはじめとしていろいろな方々のコメントを頂くこともでき、私の講演後の質疑も盛り上がって、とても有意義だった。脇田晴子先生ゆかりの賞をもらえて非常に嬉しい。

今回の連載は『ドリーム』と『デスク・セット』について書きました

 今回のwezzyの連載記事は「コンピュータに仕事を奪われなかった女性たち~『ドリーム』から『デスク・セット』へ」と題して、『ドリーム』(2017)と50年代の映画『デスク・セット』(1957、キャサリン・ヘプバーン主演)をとりあげて書きました。図書館ネタもあります。

wezz-y.com

MIDWEEK BURLESQUE vol.77 -Like a Rat, I wanna be beautiful-

 「MIDWEEK BURLESQUE vol.77 -Like a Rat, I wanna be beautiful-」を見てきた。出演者はMiss Rouge、Kily、LOViN、La Bamboo Vixen、Violet Eva、Coppelia Circus、だった。前半については、Miss Rougeはちょっと途中で小道具を変えすぎかなという気がした(脱いだ後にボア→ファンだとちょっと道具変えが忙しすぎるように思う)。Kilyは歌いながらバーレスクをするというショーなのだが、もっとマイクスタンドを使ったほうがいいように思う(イギリスでも歌いながらバーレスクするパフォーマーを見たことあるのだが、脱ぐ時は急がなくていいようマイク立てを使っていたような覚えがある)。LOViNの赤が基調の衣装を使ったショーは華やかで大変良かった。後半のLa Bamboo Vixen、Violet Eva、Coppelia Circusの3人はそれぞれ相変わらず堂々としたショーだったのだが、とくにトリのCoppelia Circusは衣装にいろいろ工夫があって良かった。

 なお、ショーの後、『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』が紀伊國屋じんぶん大賞にランクインしたお祝いにお花をもらってしまった。本を読んでバーレスクを見てみたという方もいるらしいので、批評家冥利につきるところだ。少しでも興味を持った人は是非バーレスクを見に来て欲しい。

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頂いたお花。

 

イギリス映画らしいイギリス映画で、一種の芸道もの~『ファイティング・ファミリー』

 『ファイティング・ファミリー』を見てきた。実在する女子プロレスラーであるペイジをヒロインにした作品で、ロック様が製作・出演している。脚色はかなりあるそうだが、わりと事実に沿っているそうだ。

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 ヒロインのサラヤ(フローレンス・ピュー)はイギリスのノリッジに暮らすプロレス一家ナイト夫妻の娘である。父リッキー(ニック・フロスト)も母ジュリア(レナ・ヘディ)もプロレスラーで、兄ザック(ジャック・ロウデン)と協力してプロレスの技を磨いてきた。そんなナイトきょうだいにWWEのトライアウトを受ける機会がめぐってくるが、合格したのはサラヤだけだった。サラヤはアメリカに渡り、ペイジというリングネームでプロレス修業を始めるが、友達もいないところでつらい訓練に耐えられず、めげそうになる。ザックも妹だけがトライアウトに合格したことですっかり落ち込み、ふさぎこむようになってしまった。果たして2人の運命は…

 

 プロレスのサクセスストーリーなのだが、見た目や作りは相当にイギリス映画らしいイギリス映画である。監督のスティーヴン・マーチャントはリッキー・ジャーヴェイズと一緒に仕事していたということで、笑いのセンスがかなり英国式コメディだ。ナイト一家はノリッジに住むワーキングクラスの家庭で、ノリッジなんかでプロレス興業をやってももちろんあんまりもうからないわけだが、リッキーとジュリアはプロレスのおかげで犯罪に手を染める荒んだ暮らしを抜け出せたとかいうカップルで、中年になっても強く愛し合っている。途中でいかにもイギリスらしい階級ギャップネタがあり、ミドルクラス出身のザックのガールフレンド、コートニーの両親と会うくだりは笑える一方、かなりコートニーが両家のために気を使っているのがわかり、面白い場面になっている。

 

 そんなワーキングクラスの家庭が娘をスター候補としてアメリカに送り出すということで、リッキーとジュリアは大喜びするのだが、いたたまれないのはザックのほうだ。自分に華やかなカリスマが欠けていることを思い知らされたザックは地元でふてくされて、レスリング教室の仕事や家庭を顧みなくなっていく。ザックの仕事は実は地元に大変貢献しているもので、非行に走りそうな子供たちや障害のある子に自信を持って打ち込めるスポーツと安心できる場所を提供しているのだが、ザックはその価値にあまり気づけず、落ち込みだけがひしひしと迫ってくるわけである。このあたりの描写はかなりキツいものがあるのだが、それでも最後はきょうだいの絆で解決され、心温まるオチがつく。

 

 このあたり、この映画は一種の芸道ものだと思う。この映画におけるプロレスはスポーツであるとともに家族で伝える芸なのだが、家族の中でも芸の才能に違いがあるという残酷な真実がこれでもかと表現されている。この芸の道に優れたカリスマのあるペイジと、地道に才能を発揮することはできても華やかな芸ができないザックの間に断絶ができてしまうが、芸の道というのは一つではないということが示されて終わる。

 

 役者陣はみな達者で、登場人物に魅力があるのもいい。ペイジはすごくキャラの立ったヒロインだが、最初はバカにしていたブロンドのチームメイトたちにも事情や熱意があることがわかって女同士で協力しあうようになったり、ザックとの関係に悩んだり、いろいろ成長する奥行きのある人物になっている。ナイト夫妻を演じるフロストとヘディは大変息があっている。アメリカのコーチ、モーガンを演じるヴィンス・ボーンもよかった。レスリングについてはルールなどが全然わからなくてもきちんと盛り上がってわくわくするよう撮っており、試合の場面も迫力がある。