永劫回帰するJ・K・シモンズ~『パーム・スプリングス』(ネタバレあり)

 『パーム・スプリングス』を見てきた。

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 舞台はカリフォルニア州にある砂漠のリゾート、パーム・スプリングスで、日時は2019年11月9日である。妹であるタラ(カミラ・メンデス)の結婚式に出席するサラ(クリスティン・ミリオティ)はそこでやたら余裕のあって物知りのナイルズ(アンディ・サムバーグ)に出会っていい雰囲気になる…が、そこでナイルズは突然ロイ(J・K・シモンズ)に弓矢で攻撃されてしまう。ナイルズを助けようとしたサラはそこでナイルズが引っかかっているタイムループに巻き込まれてしまい、永遠に繰り返す11月9日を生きることになってしまう。

 発想は『恋はデジャ・ブ』に似ていて、何か日常とは違う祝祭日が永遠に繰り返されるようになってしまうという話なのだが、この話ではナイルズが既にタイムループを長く経験しているところにロイやらサラやらが巻き込まれてしまうという展開になっている。そこでナイルズとサラはいろいろあって恋に落ちるのだが、この部分は最近でも珍しいくらいよくできたロマンティックコメディだ。毎日結婚式が繰り返される中で男女いろいろな相手と情事を楽しんだ末、サラを本気で愛するようになってこのタイムループから抜け出るのが怖くなってくるナイルズと、そこから抜け出るため量子力学を学び始めるサラの態度の対比が面白い。一度別れた男女が再び障害を乗り越えて愛を確かめ合うという点ではとても正統派の再婚喜劇で、だらしないがなんとなく知的でユーモアのあるナイルズを演じるサムバーグと、ブスっとしていて人生トラブル続きだが根は善人で賢いサラを演じるミリオティの相性も抜群である。

 そういうわけで主筋のカップルが最高なのだが、一方で気になるのがナイルズにタイムループに引きずり込まれ、最初は怒りに燃えていたがやがてタイムループに安らぎを見出すロイである。最後にサラとナイルズがタイムループを脱出し、ロイがそのことを知るというエピローグがあるのだが、あの後ロイはどうなったのだろうか…と考えるとなんだか感慨深い。自分もタイムループ脱出を試みるのか、それともタイムループに留まり続けるのかはよくわからない…のだが、もし後者だとしたら、J・K・シモンズ永劫回帰の中で穏やかに満ち足りているというだけでなんか妙な感動がある(と思うのは私だけかもしれないが…)。