原作ほどではないが、楽しいロマコメ~『赤と白とロイヤルブルー』(配信)

 『赤と白とロイヤルブルー』を配信で見た。ケイシー・マクイストンによる同名のロマンス小説の映画化である。

 架空のイギリス王室とアメリカのホワイトハウスを舞台に、大統領の息子と王子が恋に落ちるロマンスものである。アメリカ初の女性大統領であるエレン・クレアモント(ユマ・サーマン)の息子であるアレックス・クレアモント=ディアス(テイラー・サハール・ペレス)はイギリス王室の王子ヘンリー(ニコラス・ガリツィン)とライバル関係にあったが、王室の結婚式で大失敗をさらしてしまい、仲のいいふりをしなければならなくなる。ところがマスコミ対策で一緒にいるうちに2人はお互いの想いを無視できなくなり…

 原作は終盤けっこうちゃんとしたポリティカルサスペンスになったり、王室を過剰にロマンティックに描かないようにしていたりして、かなり手の込んだロマンスものなのだが、映画ではそのへんはわりと削ぎ落とされている…というか、登場人物も減っているし、ポリティカルサスペンスっぽいところはほぼカットされているのでそのあたりは残念である。また、ユマ・サーマン演じるエレンのテキサスアクセントが妙に不自然だとか、小説だとけっこうすらすら読めた展開が映画だとちょっとはしょり気味でご都合主義に思えるというところもある。とはいえ、ロマンティックコメディ映画としては充分楽しめる出来で、主演の2人も可愛らしく、とくにアレックス役のペレスは良かったと思う。原作では女王になっている英国王が男性になっており、その役でオープンリーゲイのスティーヴン・フライが出てくるのは大変面白かった…というか、たぶんゲイのフライが頭の固い英国王を演じるというのにメタな皮肉があるので、その面白さのために変えたのではと思ってしまった。