微妙にカメラを揺らすのはしなくてもいいのでは…『ぼくは君たちを憎まないことにした』(試写)

 『ぼくは君たちを憎まないことにした』を試写で見た。アントワーヌ・レリスによる同名のノンフィクションの映画化である。

www.youtube.com

 アントワーヌ(ピエール・ドゥラドンシャン)は妻エレーヌ(カメリア・ジョルダーナ)と幼い息子メルヴィル(ゾーエ・イオリオ)と、いろいろトラブルはあっても幸せな家庭生活を送っていた。ところがエレーヌが2015年のパリ同時多発テロ事件の犠牲になり、アントワーヌの生活は一変する。物書きであるアントワーヌは妻の遺体に対面した後、「ぼくは君たちを憎まないことにした」というブログエントリを書いて一躍著名人となるが…

 家族をテロで失ったアントワーヌが悲しみに対処する様子を丁寧に描いており、途中ちょっと中だるみするところがあったりもするが、非常にちゃんとした映画である。ショックを抱えつつひとりで子育てをすることになってつい息子と仲違いしてしまったり、急にインターネットで有名人になっていろいろ対応できなかったり、リアルに現代のテロ事件の遺族の暮らしぶりを描写している。ただ、序盤から微妙に揺れるカメラワーク(フランス映画でよくあるやる)を使っており、アントワーヌの不安を表しているのはまあわかるのだが、個人的にはこういう撮影が苦手なので映像的にちょっと好きになれないところがあった。