公民権運動の知られざる重要人物~『ラスティン ワシントンの「あの日」を作った男』(配信)

 『ラスティン ワシントンの「あの日」を作った男』を配信で見た。ワシントン大行進の運営に携わった公民権運動家バイヤード・ラスティンの伝記映画である。オバマ夫妻の会社が製作している。

www.youtube.com

 バイヤード・ラスティン(コールマン・ドミンゴ)が、さまざまな反対や懸念を押しのけてワシントン大行進を成功させるまでを描いているのだが、バイヤードがゲイでかなり政治的にも過激で押しも強いタイプなので叩かれやすいところが多く、公民権運動のリスペクタブルな運動家たちからはあまりよく思われていない存在だったという点に重点を置いている。本作は脚本に『ミルク』のダスティン・ランス・ブラックが参加しているので、ゲイとしてのアイデンティティが明確に描かれており、けっこうモテるのでボーイフレンドともめごとが起きるというような日常生活の問題から、ゲイだったせいで逮捕されたことがあってそれがスキャンダルになるとか、キング牧師との不倫などという根も葉もない噂を流されてしまうとか、ひどい話も出てくる。それでも実力あるラスティンを排斥できず、周りの人の支持を受けてワシントン大行進は成功する…のだが、ゲイだったせいでその後あまり功績が重視されなかったというような流れになっている。これについてはゲイだったことを大きく扱いすぎて、バイヤードが猛烈に階級を批判する左派だった(『ジャコビン』によると人種問題の本質は階級問題で、人種だけにフォーカスすると階級問題が見えなくなると考えていたそうで、これは当時も今も非常にコントロヴァーシャルな見解である)せいでその後全然メインストリームにならなかったことを無視しているという批判もあるそうで、まあダスティン・ランス・ブラックが脚本を書いている点からしてゲイライツの話にしたかったのだろうなと思う。