革命家ばあちゃんと陰謀論おじさん~『ブルービートル』(配信)

 『ブルービートル』を配信で見た。DCEUの作品だが全く当たらず、日本では配信のみとなった作品である。

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 主人公であるハイメ・レイエス(ショロ・マリデュエニャ)は一家で初めて大学を卒業したが、一家は家から追い出されそうで、父のアルベルト(ダミアン・アルカザール)は病気を抱えており、苦労が絶えない。そんなハイメは大企業コード社の令嬢であるジェニー(ブルーナ・マルケジーニ)と出会うが、そのせいで宇宙由来らしい奇っ怪なスカラベに寄生されてスーパーパワーを得てしまう。スカラベとパワーを狙うコード社のトップでジェニーの叔母であるヴィクトリア(スーザン・サランドン)はハイメを狙うが…

 ラテン系の一家が主人公で、スペイン語のセリフもけっこうあり、監督もプエルトリコ系で、かなりアメリカのラテン系移民のお客さんに向いた作品である。宇宙から来たスカラベがどうこう…みたいなスーパーパワー絡みの話はどっかで見たような内容なので全く新鮮味は無いのだが、面白いのはハイメの家族のほうである。レイエス家のメンバーはみんなキャラが濃いのだが、とくにハイメのおじであるルディ(ジョージ・ロペス)とおばあちゃん(アドリアナ・バラッザ)がいい。ルディは陰謀論が大好きな変人なのだがたいへん面白い人で、Qアノンみたいな一番ヤバい陰謀論にはハマっておらず、家族想いで甥のことを可愛がっている。おばあちゃんは終盤で実は元革命戦士だったことが明らかになり、とめていた可愛い三つ編みを下ろして(これが本気のしるし)、孫を守るために武装して大活躍する。ハイメは人を殺さないタイプのヒーローで、戦闘相手に暴力をふるうたびにためらっているのだが、おばあちゃんは歴戦の勇士で、敵が来ると全く臆せずに身を守るためなら「帝国主義者打倒!」とか叫んで平気で銃をぶっ放すので、孫よりもだいぶ危険人物である。

 キャラの立った家族の掛け合いとか、ものすごくバカな感じのモトリー・クルーの曲の使い方(褒めてるつもり)とか、当たらなかったというわりには大変面白かったのだが、一箇所気になったのがハイメがスーパーパワーを使うと服をなくしてしまうというところである。『ザ・フラッシュ』もそうだったのだが、DCは若い男性が服をなくすのをちょっとジョークにしすぎでは…と思う。別に大人の男性が自信満々で身体を見せつけるのはいいと思うのだが、男の子が服をなくすのが笑えるみたいなのを何度もやっていると、ちょっと若い男性の身体を軽く扱いすぎでは…と思えてきてしまう。